お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

『聖地をたずねて─西国三十三所の信仰と至宝─』 レポート【京都国立博物館】

西国三十三所 草創1300年記念 特別展
聖地をたずねて─西国三十三所の信仰と至宝─

2020年4月11日(土)~ 5月31日(日)
2020年7月23日(木・祝)~9月13日(日)
京都国立博物館 平成知新館

京都国立博物館での『聖地をたずねて─西国三十三所の信仰と至宝─』に行って来ました。

予定より延期となった特別展。
2008年にあった奈良国立博物館の特別展とどのように違うかも楽しみ。

検温は、手首で非接触の検温。
音声ガイドも誘導されてセルフ装着。

日本最古の巡礼路
西国三十三所の至宝が京博に集結!

西国三十三所は、養老2年(718)、大和国長谷寺の開基・徳道上人が、 閻魔大王から「生前の悪行により地獄へ送られる者が多い。  観音霊場へ参 ることで功徳が得られるよう、人々に観音菩薩の慈悲の心を説くように」 とお告げを受け、起請文と33の宝印を授かったことにはじまるといいま す。徳道上人が極楽往生の通行証となる宝印を配った場所が、観音霊場 を巡る信仰となり、33の札所を巡る日本最古の巡礼路となりました。巡礼路の総距離は約1000キロメートルに及び、和歌山、大阪、兵庫、 京都、奈良、滋賀、岐阜と近畿圏を包括するように伸びています。長きに わたり、日本の首都であり、文化の中心地である京都に三分の一の霊場 が集中していることから、観音信仰と巡礼の文化は全国に広がりました。

音声ガイド

【音声ガイドナビゲーター】

みうらじゅん さん
いとうせいこう さん

“このお2人のお話によって展示がどのように見えるのだろうか?”と少しおそるおそるでした。

観終えてみると、うまい置き換えで解説してもらえたので、より親しみを感じた特別展となりました。音声ガイドさんによるトークの抜粋・編集も絶妙でした(笑)。

第1章 説かれる観音

人々を悩みや苦しみから救済する観音がどのように説かれているのか、経典および儀軌から明らかに。

『妙法蓮華経(法華経)』の普門品には、「観音は三十三通りにすがたを変え、諸々の悩みや苦しみから衆生を救う」と説かれています。

それぞれの観音には、「千手千眼陀羅尼経」のように、拠り所となる経典が存在し、また「十巻抄 巻第六」をはじめとする儀軌とよばれる規則には像容が定められています。

国宝「千手千眼陀羅尼経 残巻(玄昉願経)」(部分)

千手観音の功徳を説く経典。千手観音信仰の典拠とされる。遣唐使学問僧であった玄昉が日本に伝えた。

重文「菩薩半跏像」奈良・岡寺(龍蓋寺)

片脚を一方の脚の上に組み(半跏)、片手を頬にあててものを思う(思惟)姿から、半跏思惟像ともよばれる。

経文を刺繍で

繍字法華経 観世音菩薩普門品 (千葉・那古寺)

ハッと目に飛び込んできたのが繍字法華経 観世音菩薩普門品

法華経第二十五普門品、いわゆる観音経の経文を、白の羅地に繍いとった刺繍経。経文は藍色の糸で繍いとるが、「仏」の文字のみ金糸を使用する。
経文を刺繍する上に仏の文字だけを金糸にする想い。向かう気持ちにふれたように思えます。

第2章 地獄のすがた

人々が観音へ期待した地獄からの救済。

先人がイメージした地獄とはいかなる場所であったのか、六道絵や十王図などにより可視的に。

長谷寺の開基である“徳道上人”が地獄で“閻魔大王”より、「観音霊場を巡ることで得られる功徳を広めるように」と依頼されたことに始まると伝えます。これは地獄からの救済をも“観音”に期待したことの裏返しともいえます。

地獄とは一体、どのような場所であったのでしょう。

国宝「六道絵」のうち「閻魔王庁図」 

滋賀・聖衆来迎寺
源信(942~1017)撰『往生要集』に述べる六道の様相を具像化したもの。

国宝「餓鬼草紙」(部分) 

京都国立博物館
執着を捨てられなかった者が死後に身を堕とす、餓鬼の世界を描く。平安末期の末法思想に裏づけられた作品。

左から

  • 千手観音立像[和歌山・粉河寺]
  • 不空羂索観音坐像[京都国立博物館]
  • 菩薩半跏像[奈良・岡寺(龍蓋寺)]
  • 聖観音菩薩立像[滋賀・宝厳寺]
  • 如意輪観音坐像[京都・頂法寺(六角堂)]
  • 十一面観音立像[京都・醍醐寺]
  • 如意輪観音坐像[兵庫・圓教寺]
  • 馬頭観音坐像[京都・松尾寺]

第3章 聖地のはじまり

西国三十三所の成り立ちと深く関わる人物とともに、それぞれの寺院の由緒や歴史を説いた縁起類を紐解く。

西国三十三所といい、各寺院といい、伝承をふくめ、草創や歴史を知るうえで欠かせないものに、自身の由緒を説明する「縁起」と呼ばれる作品が。

西国巡礼の祖

徳道上人像(部分)

奈良・法起院

長谷寺の開基とされる“徳道上人”は、地獄で閻魔大王より観音霊場三十三所の功徳を広めるように依頼され、よみがえると三十三所巡礼の利益を説いたと伝えられる西国巡礼の祖。

縁起

国宝「粉河寺縁起絵巻」(部分)

和歌山・粉河寺

第三番札所・粉河寺の創立や、本尊・千手観音像の霊験を描いた絵巻。猟師や長者の暮らしぶりや、登場人物のいきいきとした表情が見どころの古典的名品。

那智山経塚出土仏教遺品

和歌山・青岸渡寺、東京国立博物館

密教の金剛界曼荼羅の中心、成身会を構成する如来・菩薩像や、諸尊の持物を平面でなく立体で表現したほかに例を見ない品。

  • 大日如来坐像
  • 阿しゅく如来坐像
  • 宝生如来坐像
  • 無量寿如来坐像
  • 不空成就如来坐像
  • 金剛波羅蜜(金剛菩薩)坐像
  • 金剛宝波羅蜜(金剛宝菩薩)坐像
  • 金剛法波羅蜜(金剛法菩薩)坐像
  • 金剛羯磨波羅蜜(金剛業菩薩)坐像
  • 金剛界曼荼羅成身会 三昧耶形
  • 五種鈴(独鈷鈴・三鈷鈴・五鈷鈴・宝珠鈴・塔鈴)
  • 如来立像
ガラスケースに配置され並べられたようすは、立体でこれだけ揃っていると存在感で感じられるようでした。

第4章 聖地へのいざない

人々を巡礼にいざなうにあたり、参詣曼荼羅や勧進状をはじめ、大きな役割を果たした作品を紹介。

三十三所観音曼荼羅図

滋賀・観音正寺
中央に釈迦三尊と聖徳太子を配し、周縁に三十三所の本尊を描いたもの。

施福寺参詣曼荼羅図

大阪・施福寺(槇尾寺)
槇尾山の伽藍を描く。天正9年(1581)に織田信長と対立し焼き払われたが、その焼失直前の姿をとどめる。

清水寺再興勧進状

京都・清水寺
雲を払うほどの大樹も一粒の種から育つ、と小さなものでも集まると大きな力となる喜捨の重要性をのべる。

長命寺参詣曼荼羅図

滋賀・長命寺
柄杓を手に浄財を募る僧侶のすがた

第4章の感想 広めていくために

第4章では、音声ガイドのトークがとてもわかりやすくマッチしていました。言葉の記憶はあいまいですが、お寺を知ってもらったり建て直したりするために、今でいう新築マンションのチラシにあるような「完成予想図」。なるほど。元あったお寺の姿や予定の全体像が絵で見えるとわかりやすい。納得のお話で、昔からもお寺を維持・継続する工夫心にふれたようでした。

第5章 祈りと信仰のかたち

貴賤を問わず信仰され、人々が祈りをささげた多様な観音のすがたを、絵画、さらには彫刻を中心にたどります。

西国三十三所の各寺院は、“聖観音”・“十一面観音”・“千手観音”・“馬頭観音”・“如意輪観音”・“准胝観音”・“不空羂索観音”のいずれかが本尊となっています。これら七種の観音が、六道(天道・人道・阿修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)それぞれの衆生を救う六種の観音、すなわち六観音(真言では不空羂索観音、天台では准胝観音を除く)と重なるのは、西国三十三所のの観音霊場としての成立と関係するともいわれます。

秘仏「如意輪観音坐像」

京都・頂法寺(六角堂)
建礼門院徳子(平徳子)が、治承2年(1178)6月27日に安産祈願のため寄進したとの伝承を持つ秘仏。

如意輪観音坐像

兵庫・圓教寺
性空上人が刻ませた如意輪観音は、延徳4年(1492)に焼失したという。それにかわって安置された像で、延応元年(1239)に圓教寺の僧妙覚によって造られた。本体から岩座まで含めてサクラの一材から彫出する。

重文「十一面観音立像」

和歌山・金剛宝寺護国院(紀三井寺)
紀三井寺は秘仏の十一面観音をまつるが、その本尊とは別に同時期の十一面観音があるもう一躯。

重文「如意輪観音像 一山一寧賛」

京都・松尾寺
中国・元時代の絵画様式をそのまま既存の図像に応用した作品。徳治2年(1307)の制作と判明する点も基準作として貴重。

重文「千手観音立像」

京都・醍醐寺
本来は上醍醐の観音堂本尊であった、と考えられている千手観音像。

十一面観音立像

京都・醍醐寺
理知的なまなざし、写実的な衣の表現などから、鎌倉時代前半に慶派仏師によって製作されたと考えられる。

千手観音立像

和歌山・粉河寺
像高160,2
粉河寺の本尊は千手観音。絶対秘仏。本堂背面の後戸に築かれた仏龕に、本尊を守るかのように北向きに立つ千手観音。通称「裏観音」とも「北面観音」ともよばれている。もとは聖観音ないしは十一面観音であったものを、背面に材を足し脇手をくわえて千手観音に改造した可能性。

千手観音立像

滋賀・園城寺(三井寺)
像高180.3
頂上仏面から蓮肉までを一木から彫出するという構造や、圧倒的な量感を示す体躯の表現などから、平安時代前期、9世紀の製作と考えられる。脇手が太作りなのもこの時期の千手観音の特徴。

十一面観音立像

和歌山・金剛宝寺護国院(紀三井寺)
本尊とは別に本尊同様に十~十一世紀の作と思われる。(紀三井寺の本尊は、十一面観音.それとともに千手観音が秘仏としてまつられている。)

聖観音菩薩立像

滋賀・宝厳寺
弁天堂の後ろに割れた状態であったものを修理したもの。もとは開山堂にあったもの。左手で蓮花のつぼみをとり、右手をつぼみに添えている。12世紀の中ごろから後半の作と考えられる。(宝厳寺の本尊は、千手観音。六十年に一度ご開帳される秘仏)

馬頭観音坐像

京都・松尾寺
秘仏馬頭観音のお前立としてまつられる、等身大の馬頭観音。像内に仏師の名があり、法橋浄運によって造立された。海沿いの地域に馬頭観音をまつる理由としては、海難救助ということが考えられる。

七観音像厨子

滋賀・長命寺
本尊は千手観音立像で、左右に十一面観音と聖観音が安置。本堂の左脇に置かれている七観音(聖観音・不空羂索観音・如意輪観音・馬頭観音・千手観音・准胝観音・十一面観音)をまつる厨子。

伝観音菩薩・勢至菩薩立像

京都・清水寺
運慶によって製作された神奈川・浄楽寺の阿弥陀の脇侍像とよく似ており、本像も運慶の作という説があるがいずれにせよ運慶周辺の慶派仏師によるとみて間違いない。

「聖地をたずねて」展での七観音

聖観音「聖観音菩薩立像」滋賀・宝厳寺
十一面観音「十一面観音立像」京都・醍醐寺
千手観音「千手観音立像」和歌山・粉河寺
如意輪観音「如意輪観音坐像」兵庫・圓教寺
馬頭観音「馬頭観音坐像」京都・松尾寺
准胝観音「清瀧本地両尊像」(部分)京都・醍醐寺
不空羂索観音「不空羂索観音坐像」京都国立博物館

下の看板の写真では、
数は7ですが
七観音ではないけれど “ほぼ七観音”。
↓↓↓

左から

  • 馬頭観音坐像[京都・松尾寺]
  • 千手観音立像[和歌山・粉河寺]
  • 聖観音菩薩立像[滋賀・宝厳寺]
  • 如意輪観音坐像[京都・頂法寺(六角堂)]
  • 如意輪観音坐像[兵庫・圓教寺]
  • 十一面観音立像[京都・醍醐寺]
  • 不空羂索観音坐像[京都国立博物館]

いろんな観音様のお姿があるのがわかりやすい。

見比べて見ることができる展示でした

特別展での楽しみは、“構成・展示をされた方の工夫を見つけること”です。今回うれしくなったのが、見比べて確認できた展示だったこと。

粉河寺「千手観音立像」と、園城寺(三井寺)「千手観音立像」。
清水寺「十一面観音立像」と、元慶寺「帝釈天立像」。

“背面の手をくわえた像”と、“一木彫りの像”。
容貌が似ている像。

第6章 巡礼の足あと

巡礼の盛況とともに刊行された書物、または訪れた人々が実際に身につけたり、奉納した遺品にふれます。

西国三十三所巡礼札

滋賀・石山寺
西国三十三所の巡礼者が参詣のおり、その証として納めた札。
さまざまな巡礼札を見るたび、巡礼する人の真剣な願い=祈りをずしっと感じます。

第7章 受け継がれる至宝

宗派、歴史が一様でない西国三十三所寺院において、大切に受け継がれてきた固有の寺宝を紹介。

重文「毘沙門天立像」 

岐阜・華厳寺
本尊十一面観音の脇に、一方の不動明王とともに安置される毘沙門天像。

重文「大刀 無銘」 

兵庫・播州清水寺
坂上田村麻呂が観音の霊験によって、鈴鹿山の鬼神を退治した後、奉納したと伝わる「騒速」とその差添計3口のうちの1口。

国宝「法華一品経 観世音菩薩普門品」(長谷寺経のうち)(部分) 

奈良・長谷寺
『法華経』二十八品をそれぞれ一巻として、金銀箔や砂子などで飾った料紙に書写する一品経。

毘沙門天立像 

岐阜・華厳寺
本尊秘仏の十一面観音をまつる厨子の脇に一方の不動明王とともに安置されている。

毘沙門天立像 

京都・頂法寺(六角堂)
秘仏本尊の如意輪観音の脇侍として地蔵菩薩像とともにまつられている。

▼京都・清水寺「十一面観音立像」とよく似ている

梵天・帝釈天立像

京都・元慶寺
西国巡礼の番外に数えられる元慶寺。
帝釈天の容貌が、清水寺の十一面観音とよく似ている。

特別展を締めくくるのは

西国三十三所観音集会図

兵庫・中山寺
画面上半分に“観音浄土”、下半分に“中山寺の伽藍”。その境界に位置する画面中央付近に“中山寺の本尊厨子”を描く。かつて浦上某という者が巡礼の功徳により中山寺本堂にて目撃した三十三観音集会を描くもので、結縁のため多くの人々が参詣に訪れるようになった。
西国三十三所巡礼の功徳により目撃した光景を、特別展のラストで目にすることができる光栄。「もう。ありがとうございますーー!」と思いながら会場をあとにすることができました。

図録

記念撮影スポット

粉河寺の本堂後戸安置の千手観音立像。

京都国立博物館の概要と年間の主だった展示企画、イベント等をお伝えしています。…

次の特別展

次の京都国立博物館の特別展は、
オンラインでの事前予約制(日時指定券)のようです。

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