お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

第67回 正倉院展 レポート【奈良国立博物館】

第67回 正倉院展

平成27年10月24日(土)~11月9日(月)
奈良国立博物館

2015年秋、『第67回 正倉院展』を観せていただきました。
正倉院展は2008年第60回以来の2回目です。

63件の宝物が出陳。
仏教に関わる宝物や年中行事に用いられた品々の充実に特色。

裁縫の上達を願って七夕に行われた行事・乞功奠(きっこうでん)に関わる品がまとまって出陳されるのも注目される。

動物の毛を使用した宝物や、動物が表された多彩な宝物など。天平時代の文化や暮らしの一端に触れることができます。

奈良国立博物館から若草山を眺めることができます。

若草山の山焼きは、江戸時代からつづいており山頂にある古墳の霊魂を鎮めるために始まったと、伝えられています。

正倉院展

戦時中、空襲をさけるために奈良国立博物館に避難してあった宝物を終戦の翌年に元に戻る際に「その前に一目見たい」という人々の声に応えることになり第一回の正倉院展の開催が決まったそうです。

正倉院宝物は現在も勅封によって厳重に管理され、古来行われた曝凉(虫干し)の伝統に則り毎年秋にのみ宝庫が開封されます。正倉院展はこの期間に合わせて行われ、毎年約60件前後の宝物が出陳されます。

1、聖武天皇ご遺愛の品々

聖武天皇の七七忌(四十九日)にあたる天平勝宝8歳(756)6月21日、光明皇后によって天皇ご遺愛品六百数十点が東大寺大仏に献納されました。その品々は正倉院宝庫の北倉に納められ、勅封によって厳重に管理されてきました。

【平螺鈿背八角鏡】

【山水花虫背円鏡】

神代から神武天皇を経て持統天皇(697年退位)の時代までの出来事を編年体で記す『日本書紀』。中国で歴代王朝ごとに作成されていた正史にならい、わが国で最初に編纂された国史。

2、天平の音楽と舞踊

正倉院展 琵琶

【彫石横笛・彫石尺八(北倉)】

東大寺大仏に献納した際の目録『国家珍宝帳』には多くの楽器が記されている。記載されている珍しい石製の楽器。

【紫檀木画槽琵琶(南倉)】

背面のモザイク文様が印象的。
展示のエリアには、彫石横笛・彫石尺八の演奏が流れ、伎楽面なども展示されていました。琵琶は、裏面のモザイクが華やかで目を惹いていました。

3、正倉院の仏具

平安時代に東大寺の宝蔵から移された品が多くを占める南倉には、寺で用いられた仏具が伝えられています。

【柿柄塵尾(南倉)】

【漆柄塵尾箱】

【漆柄塵尾】

【玳琩竹形如意】

ウミガメの甲羅である玳瑁を全面に使用した如意。

4、献物に関わる品々

正倉院宝庫には、大仏開眼会を始めとする東大寺の法要において、王族や貴族たちが見坊下宝物が数多く伝えられています。献納の品は箱に納めたり、小さな台(机)に載せて仏前に進められたようで、宝庫の中倉にそのような箱と台(机)が数多く伝えられています。

献物箱【紫檀木画箱】【蘇芳地金銀絵箱】

美しく装飾が施されています。

献物几【粉地花形方几】

献物を載せる天板を花形にしたものが多く、花のイメージが投影されています。

5、奈良時代の装束と装身具

奈良時代にはすでに僧侶が袈裟を着する習わしが定着していました。

【七条褐色紬袈裟(北倉)】

聖武天皇ご遺愛の宝物から『国家珍宝帳』の筆頭に掲げられる袈裟のうち、中国に初めて密教を伝えたインド主神の僧・金剛智所用の由緒を持つ七条褐色紬袈裟。絹の横幅3m。
奈良時代には中国の制度に倣い、帯に装身具を付けることも流行しました。

【間縫刺繍羅帯残欠】

【琥珀魚形】が取付けられていた。
“空海”よりも昔の時代にもうすでに密教が伝わっていたことにも驚き、またその袈裟がとても良い状態で残っていたこと、そしてその袈裟を収納する箱が漆塗りの箱であったこと驚きました。絹は800年といわれていますが、1300年経っても傷みが見られませんでした。

6、動物の毛を使用した宝物

【伎楽面髭残片】 馬の鬣
【筆】 狸毛、鹿毛、兎毛
【毛氈】 羊毛
【花氈】

7、正倉院文書と地図

【正倉院古文書正集 第四十二巻】

正倉院宝庫には、造東大寺司の写経所の帳簿類や東大寺に関係する地図が伝わっています。写経所で記された事務書類は、転用された文書や廃棄文書の裏が利用。諸国の戸籍や計帳、正税帳など全国から奈良の都に上伸された文書が紙の裏に残されている。
紙の裏にも文字がしっかり書かれている実物を見ました。使いまわしをして有効利用、紙は貴重だからだと思うのですが、裏の文字もしっかり見えているのでこれで支障がなかったのか、どうでしょうか。昔も今も思いつく工夫をされていて親しみも感じました。

8、年中行事に関わる宝物

正倉院宝庫には年中行事に関わる宝物も納められています。
七夕の夕刻に行われる“乞功奠”。手芸や裁縫の上達を願う儀式で、針や糸、楽器、瓜や茄子など供えられました。金・銀・鉄といった様々な金属で作られた大きな針や諸色に染められた糸。

【紅牙撥鏤尺 こうげばちるのしゃく(中倉)】

朝廷にものさしを献ずる儀式に使用されたとされる。
正倉院宝物には珍しい天人お姿が刻まれている。
斑犀尺、木尺と多様なものさしが展示。

9、聖語蔵の経巻

正倉院宝庫の隣に校倉造の蔵がもう一つ。
「聖語蔵」はもとは東大寺の尊勝院の経蔵で、明治時代に皇室に献納され現在の場所に移築された。およそ5000巻の経巻が納められています。

【天平十二年御願経】

光明皇后が亡き父母の冥福を祈るとともに聖武天皇の御代の安泰を願って書写させた一切経の遺品。
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