平安古経展
平成27年4月7日(火)~5月17日(日)
奈良国立博物館
「平安古経展」のチケットを頂いたので、行って来ました。ありがとうございます。
平安時代の経典の歴史と多様性をめぐるとともに、まぼろしの久能寺経に触れる機会となります。
第1章 九~十世紀の墨書経
第2章 数を揃える -大般若経と一切経の書写-
第3章 素材を選ぶ -経塚遺品-
第4章 経典を摺る -印刷の始まり-
第5章 金泥・銀泥による写経
第6章 紙を飾る -彩牋墨書経-
第7章 久能寺経
「写経・書だけの展示での勉強か…」と身構えたものの、これが意外や意外、「奥深くて、とてもおもしろい!」と大満足の観覧となりました。
第1章 九~十世紀の墨書経
第2章 数を揃える -大般若経と一切経の書写-
第3章 素材を選ぶ -経塚遺品-
長期間の保存を目的とするため銅板や瓦板といった素材が選択され、そこに経文を刻むこともおこなわれた。
第4章 経典を摺る -印刷の始まり-
第5章 金泥・銀泥による写経
【国宝 摩訶般若波羅蜜経 巻第十七 醍醐寺文書聖教】
紺紙に銀泥で界線を引き、金泥で経文を書写する。
表紙は金銀泥で宝相華唐草文を表し、左下端の枠内に金泥で
「大品般若経巻第十七」と外題を書く。見返しには、釈迦説法図が金銀泥で描かれる。
【摂大乗論釈 巻第五】
紺紙に銀泥で界線を引き、金泥で経文を書写する。表紙は金銀泥で宝相華唐草文を表し、左下端の枠内に金泥で「大品般若経巻第十七」と外題を書く。見返しには、釈迦説法図が金銀泥で描かれる。
説法図は、なだらかな遠山を背景として、正面向きの釈迦を中心に、左右の文殊菩薩・普賢菩薩を配する。
【重要文化財 一字宝塔法華経 巻第五】
紺地に金泥で書かれた法華経。
銀泥で界線を引き、一行に十五基ずつ宝塔を描き、宝塔の水輪(丸い部分)に金泥で経文を一字ずつ書き入れる。
【国宝 金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第六塔】
紺紙に金泥で『紺光明最勝王経』の経文を書き連ねて裳階付きの九重塔を形作り、
その左右および下方に、経典の内容を金銀泥や彩色を用いて絵画化したもの。
【重要文化財 法華経金字宝塔曼荼羅 第六塔】
紺紙に金泥の細字で『法華経(妙法蓮華経)』の経文を
九重の宝塔形に書写し、その左右に経意に基づく場面を細密な金銀泥絵で表す。
【国宝 金銀字一切経 中尊寺経】
【仏母大孔雀明王経 巻下 中尊寺経】
【広弘明集 巻第十七 中尊寺経】
【大般若経 巻第四百十 中尊寺経】
紺紙に銀泥で界線を引き、金銀泥で一行ずつ交互に経文を書写した一切経。
【大般若経 巻第三百四十五 神護寺経】
【般若心経 神護寺経】
【金剛三昧経 巻下 神護寺経】
【道神足無極変化経 巻下 神護寺経】
【大智度論 巻第七十四 神護寺経】
神護寺に伝来した紺紙金字一切経。
紺紙に銀泥で界線を引き、金泥で経文を書写する。
第6章 紙を飾る -彩牋墨書経-
信仰心の深さを具現するために、さまざまの方法によって経文を美しく飾ることがおこなわれた。
末法思想や浄土教が浸透した平安時代後期には、貴族層の間で写経の荘厳が盛んとなり、一方では文字を金泥や銀泥で記して輝かせる方法が採られ、もう一方では経文を載せる料紙に工夫を凝らして墨書の文字を際立たせる方法が採られた。
- 紙全体を色染めする
- 大小の金銀箔を紙の上に散らす
- 金銀砂子(細粒)を撒く
- 文様を金銀や絵の具を使って描く
- 木板を使って文様を摺り出す
装飾科料(=彩牋)の墨書経の多くは『法華経』であるが、
通常8巻から成る『法華経』を28巻に分けて書写する「一品経」の初見は平安時代後半期。
【国宝 法華経 序品 竹生島経】
金銀泥を使って蝶、鳥、鳳凰、宝相華、草花、蕨、雲などの下絵を大きく描き、金泥で界線を引き、経文を墨書。
【法華経断簡】
丁子吹きの料紙に金泥で界線を引き、金銀泥によって下絵として小さな蝶・鳥・草木を描いて経文を墨書する。
【法華経 妙音菩薩品】
厚手の斐紙(雁皮紙)を五枚継ぎ、経文本文の書かれる部分に銀の揉み箔を撒き、金の細かい截金で界線を施して経文を墨書。本紙の天地の界外には、截金によって七宝繋文が施された文様帯があり、七宝内の格子の中には九つの目が押されている。
【国宝 一字蓮台法華経 巻第一、巻第三、巻第五】
経文の一文字一文字を仏に見立てて蓮台に載せる「一文字蓮台」の『法華経』。料紙には斐紙(雁皮紙)を用い、銀泥で縦横の界線を引き、一行に十七基の蓮台を置いて経文を墨書する。
蓮台は輪郭を銀泥で描き、花弁には金、銀、橙、青、緑の色が塗られるが、無彩色で輪郭だけのものもある。また、経本文と偈頌の部分では蓮台を描き分けており、偈頌の文字は請花が省略された反花のみの蓮台に載っている。
装飾経の一種ではあるが、料紙全体を華美に飾るのではなく文字への装飾に集中しており、写経の一字ずつを仏と捉える深い信仰に基づいた、品格のある優品である。
【国宝 法華経 序品 竹生島経】
金銀泥を使って蝶、鳥、鳳凰、宝相華、草花、蕨、雲などの下絵を大きく描き、金泥で界線を引き、経文を墨書。
【国宝 法華経 巻第三、巻第五 浅草寺経】
金銀泥を使って蝶、鳥、鳳凰、宝相華、草花、蕨、雲などの下絵を大きく描き、金泥で界線を引き、経文を墨書。
【法華経】
回線を銀泥で引き、界線の天地に蝶・鳥・草木・花・楽器を描いた“法華経”
第7章 久能寺経
『法華経』28品の各品を1巻に書写する「一品経」。
まとまった巻数が当初の姿に近い形で残る「久能寺経」。
久能寺経は、
鳥羽上皇とその周辺の人びとが結縁して永治元年(1141)頃に書写されたもので、もとあった全30巻(または32巻)のうち26巻が現存する。“装飾経”であり、現存26巻のうち4巻には当初の見返し絵があり、経文が墨のみで書かれている。
紺地の紙に、金文字(金泥)での写経。これは何度か見たことがあったものの、表紙が金銀泥で宝相華文・釈迦説法図。ただ描いてあるだけでなく、「そうだよな~」と納得するものがあり一気に「これぞ荘厳。」という世界観が広がります!
そして、宝塔や蓮台に一文字ずつが書かれたもの、経文の文字で九重塔を形どっていたり、一行ずつ金泥と銀泥の交互に文字が書かれていたり、紙や枠外に蝶・鳥・草木・花・楽器を描かれていたり、金箔などを散らされていたり、
写経の平面の世界がこんなに広がる! もう感動でした。
龍興寺の【国宝 一字蓮台法華経】が、一つ一つがとても丁寧にかかれ色付けもされていて、難しさだけでない世界を見せて貰えるようで明るい気分になりました。
紺地に金銀泥だけで描かれる荘厳の世界観も素晴らしいものですが、ちょこっと花・鳥・草木・蝶などで飾られた和み癒されるものも間違いなく同じ世界を見せて頂いたようでとても嬉しくなりました。
「この感動を多くの方にあじわって頂きたいなぁ」と思う特別展でした。
最後の展示に“経文をおさめていた厨子”があり、人が入れるぐらいにとても大きくて、内扉にも梵字などがいっぱい描かれていて、護っているように感じられとても見事でした。厨子は2個対になっていて、1個は海外にあるとのこと。
展示物一覧や図録になく、とても気になっていただけに謎だらけでしたが、「奈良国立博物館だより」でその厨子を発見しました!
同時開催されていた『名品展 珠玉の仏教美術』で展示されていた重要文化財「大般若経厨子」(奈良国立博物館)
経文はどのように納まっていたのでしょうか…興味は尽きません。『大般若経』の納められていたということがわかり画像でも確認できて、本当にスッキリしました!!
鹿さん、こんにちは。
博物館周辺には、いつもたくさん鹿がいます。
近くの氷室神社には、藤の花が咲いていました。
天馬 -シルクロードを翔る夢の馬- 平成20年(2008)4月5日(土)~6月1日(日)奈良国立博物館 奈良国立博物館で、4月5日(土)から6月1日(日)まで『天馬 -シルクロードを翔る夢の馬-』展が開催されていました。 […]
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