お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

「みんなのミュシャ」展 レポート【京都文化博物館】

「みんなのミュシャ」展

2019年10月12日(土)~2020年1月13日(月・祝)
京都文化博物館

京都文化博物館での
「みんなのミュシャ」展に行ってきました。

“みんなの”って?

気になるような、楽しそうな。

みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術

京都文化博物館
2019年10月12日(土)~2020年1月13日(月・祝)

アール・ヌーヴォーを代表する芸術家アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)。彼が紡ぎだした、「線の魔術」ともいえる華やかな作品は、没後80年経った今なお、世界中の人たちを魅了し続けています。
本展では、ミュシャが手がけたポスターなどのグラフィック作品はもとより、ミュシャ幼少期の作品、蔵書や工芸品、アトリエで撮影された写真、祖国チェコへの想いを込めた作品などを通して、ミュシャの多様な魅力に迫ります。ほかにも、ミュシャの作品から影響を受けた明治期の文芸誌から、1960-70年代のイギリス・アメリカを席巻したグラフィック・アート作品、日本のマンガ家やイラストレーターの作品まで、およそ250点を展示します。
時代を超えて愛される画家の秘密をひも解く、これまでにないミュシャ展です。

アルフォンス・ミュシャ

1860年、南モラヴィア地方(現在のチェコ共和国東部)の都市、イヴァンチッツェに生まれた。19歳にウィーンへ。ミュンヘンの美術アカデミーで学ぶ。1887年、パリに出てアカデミー・ジュリアンに入学。1894年、女優サラ・ベルナールの主演舞台のためにポスター制作。1906年、プラハの聖ロフ教会で結婚し、アメリカへ渡る。1910年に祖国に帰る。1939年に没する。

ハプスブルク帝国の支配下にあったチェコ人のミュシャが、祖国復興の夢を抱きながら、ヨーロッパ芸術文化の中心都市、ウィーン、ミュンヘン、そしてパリで、画家としての修行を積むうちに、新しい時代の息吹に感応して創り出された独自のスタイル(様式)であった。

音声ガイド

ミュシャ・ナビゲーター 千葉雄大(俳優)
解説ナレーター 中村千絵(声優)

スペシャルインタビュー 松苗あけみ・天野喜多孝

千葉雄大さんの語りは、
第一会場ではミュシャの言葉で

ポツポツと語り口は
忠実であるミュシャを想像できて
敵役だったのではないかと思いました。

今回の音声ガイドの内容は、
借りて大正解でした。

撮影スポット

撮影スポットは、2か所あります。
しっかりと撮影可能な場所と
設定があり注意事項の表示があり、
安心して鑑賞も撮影も楽しめました。

1つめ撮影スポット

入口入ってすぐのスペース。

撮影可能の場所と、撮影禁止の場所の
境目に区切りの矢印で表示された
説明パネルがあります。

2つめ撮影スポット

ミュシャ3作品です!

撮影可能な作品の前に、
白線でスペースを囲まれているので
安心して撮影可能であるとわかります。

白線のまわりのスペースも
大きくとってあるので
鑑賞もゆったりできました。

注意事項のパネルもあるので
読んでおくと、
心づもりができるので安心です。

こんな代表作を撮影できるなんて嬉しい。

展示構成

1.序ーミュシャ様式へのインスピレーション

ミュシャがコレクションしていた書物・工芸品も数多く展示され、ポスター画家として一世を風靡するまでの足跡をたどります。なかでも、鳥や花が描かれた日本の七宝焼の壺などがあり、ミュシャも「日本美術の影響がある」と語ってたそうです。

モラヴィアの民芸品や聖像、ロココ調の家具、日本の七宝焼きや軸絵、中国の屏風などで飾られたミュシャのアトリエは、「美の聖堂」と呼ばれていた。ミュシャは生涯これらの収集品を愛し、自らの創作の糧とした。

  • “ハンス・マカルトの≪聴覚≫と≪嗅覚≫-連作〈五感〉より”
  • “カトリック儀式用振り香炉”
  • ≪花鳥文七宝花瓶≫19世紀後半 有線七宝

展示は、1つめの撮影スポットの次に、ミュシャ財団理事長 ジョン・ミュシャからのメッセージから始まります。“祖父”と語られているのでお孫さんなのですね。その中に、ミュシャ家と日本との関係について触れられていてぐっと親近感をもっての始まりでした。

ミュシャが「音楽があるから教会が好きなのか、教会という場所にある音楽があるのが好きなのかわからない。」と語ってたそうです。第4章で“視覚”の要素について語られていましたが、この1章で五感より“聴覚”、“嗅覚”がコレクションの中にあったのは、ミュシャの作品の中に五感によるものが含まれているのかと興味深く感じました。

2.ミュシャの手法とコミュニケーションの美学

「私は芸術のための芸術を創るよりも、大衆のための画家でありたい。」

チェコ復興運動の機運が高まるなか、ミュシャは地元の政治風刺雑誌や集会のパンフレットの挿絵の仕事を引き受けるようになる。(略)

ミュシャはアカデミー教育に裏打ちされたデッサン力と物語世界のエッセンスを大衆にわかりやすく伝えようとする丁寧な仕事は異彩を放っていた。さらにまた、明確で流麗なミュシャの描線は、版画技術による印刷表現には理想的なスタイルだった。

  • 『オー・カルティエ・ラタン』誌・表紙(創刊6周年記念特別号)
  • “『ハースト・インターナショナル』誌・表紙”

ミュシャが歩く(?)よりも先に、首からリボンにくくりつけたペンを持っていたとのエピソード。生まれながらに絵画美術の人だったのだと印象に残りました。

衝撃を受けたのが、“『ハースト・インターナショナル』誌・表紙”。写真習作とならべて展示されていました。写真習作を見ながら描かれていると思うのですが、
どちらがリアル(写真)か分からないという不思議。美しく忠実に描かれているだけでなく、そのものがもつ“美”も作品で引き出されているのかと推測。

3.ミュシャ様式の「言語」

「外形は言語である。〔…〕構図は画家がその強い思いを伝えるためのスピーチである。」

ミュシャは効果的な「視覚言語」を確立するため様々なデザイン上の工夫を試みる。まずは目を引く魅惑的な女性の姿をメッセージの伝達者としての構図の中央に置き、花や宝石などの装飾モティーフを組み合わせながら美的効果を高める。そして女性の背後に聖画やステンドグラスを連想させる円形モティーフを配して、主題の精神性と構図上のフォーカルポイントを強調。さらに、超心理学者アドベール・ド・ロシャスの影響の下、視覚が心理に与えるインパクトを考慮しながら構図を構築しようと試みた。そうした成果は、主題の象徴的な意味を読み解くことを促す視覚誘導のための直線や曲線、円などの幾何学パターンとなって表れる。

「美しく、わかりやすく、記憶に残りやすい」ミュシャのポスター・デザインは、パリの大衆に「ミュシャ・スタイル(様式)」と呼ばれ、最先端のアート(アール・ヌーボー)のスタイルの典型となる。

  • アルフォンス・ミュシャ《ジョブ》
  • アルフォンス・ミュシャ《黄道十二宮》
  • アルフォンス・ミュシャ《ジスモンダ》
  • アルフォンス・ミュシャ トパーズー連作〈四つの宝石〉より

アルフォンス・ミュシャ《ジスモンダ》

挿絵画家ミュシャがポスター作家として知られるようになった劇場ポスター

ミュシャの仕事は、
さし絵から始まったのですが、

ポスター画家が休暇中のため
ミュシャが描くことになり、

ミュシャはポスター経験はないものの
今まで書き溜めてきていたものがあったとのエピソード。

アルフォンス・ミュシャ《ハムレット》

ハムレットの背後に、
亡き父を色暗く描かれ

ハムレットの足の下に
色暗くオフィーリアが描かれる

ミュシャの手法だそうです。

ここでミュシャの仕事が
風刺の挿絵からはじまった

“ミュシャの風刺の表現”というものを感じました。

4.よみがえるアール・ヌーヴォーとカウンターカルチャー

ミュシャがパリを後にしてから58年、そしてその死からも24年の歳月を経た1963年、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館でミュシャ展が開催された。「あーる・ヌーヴォーとアルフォンス・ミュシャ」と題された回顧展。同時進行で、もうひとつのミュシャ展が二部構成でメイフェアのグローヴナー画廊とアーサー・ジェフリス画廊で共催された。冷戦体制が進むなか、(略)ふたつのミュシャ展が、忘れられたチェコ人画家の業績を光の下によみがえらせることになる。

  • アルフォンス・ミュシャ《ツタ》
  • アルフォンス・ミュシャ『装飾資料集』図45
  • アルフォンス・ミュシャ《椿姫》
  • アルフォンス・ミュシャ≪北極星ー連作《月と星》より≫
  • アルフォンス・ミュシャ《舞踏-連作<四芸術>より》
  • 「ザ・コレクターズ」(ワーナー・ブラザース=セヴン・アーツ・レコード)
  • 「ジプシー」(ジプシー/メトロメディア・レコード)
  • 「フラワーズ」(ザ・ローリング・ストーンズ/ロンドン・レコード)
  • 「アオクソモクソア」(グレイトフル・デッド/ワーナー・ブラザース=セヴン・アーツ・レコード)
  • ≪トリトン・ギャラリーでの個展ーダンディーとしてのセルフポートレート≫
  • ≪ラヴ・ライフ≫
  • ≪フィッシャーウーマン≫
  • ≪ジム・クウェスキン・ジャグ・バンド コンサート 1966年10月7-8日、アヴァロン・ボールルーム≫
  • 『ニンジャック』(Vo.1,No.3)
  • 『ストレインジャーズ・イン・パラダイス(Vo.3,No.52)

5.マンガの新たな流れと美の研究

  • アルフォンス・ミュシャ≪アカデミー・コラロッシ「ミュシャ講座」≫
  • アルフォンス・ミュシャ《ヒヤシンス姫》
  • アルフォンス・ミュシャ《モナコ・モンテカルロ》

アルフォンス・ミュシャ《メデイア》

ミュシャの作品が素晴らしくて、
それがマンガに直結するように
思えなかったのですが、

「あれ?この表情は…漫画チック?」
と立ち止まって見直したのが≪メデイア≫。

ナイフを片手に、下におろしている
人物の立ち姿と顔の表情の表現が
マンガへの流れを感じました。

  • 天野喜孝≪ファイナルファンタジーXIV 嵐神と冒険者≫
  • 表紙デザイン:藤島武二 『みだれ髪』(与謝野晶子)
  • 出渕裕≪聖戦≫「ロードス島戦記」(月刊『ニュータイプ』1990年11月号付録ポスター用イラスト)
  • 花郁悠紀子「不死の花」(『プリンセス』1979年8月号)
  • 波津彬子「海神別荘」(「鏡花幻想 波津彬子原画展」ポスター用イラスト/和泉鏡花記念館)
  • 松苗あけみ≪星座の少女≫(『月刊ぶ~け』1989年9月号表紙用イラスト)
  • 水野英子「オンディーヌ」(音楽劇LPレコード『星のオンディーヌ』折込ポスター用イラスト)
  • 山岸凉子≪真夏の夜の夢≫「アラベスク」(『花とゆめ』1975年4月9号付録ポスター用イラスト)

山岸凉子さんの『日出処の天子』の作品の展示もあって、「ここにもミュシャが」とつながりと広がりを興味深く感じました。

文字の字体(フォント)

人物の背景もですが、
後ろにラインで区切られた中の模様も

そして書かれた文字の字体(フォント)も
それぞれちがって魅力的。

ミュシャに影響を受けた
プロの方の作品とお話もあり

とても面白くて、すごい高揚感で展示室を出ました。

もうすっかりミュシャの世界に惹き込まれ
すっかり魅せられました。

図録・グッズ

淡いピンク色で
金色のラインの絵となっている図録です。

グッズ売り場では、
ミュシャ作品がズラッと並ぶと
「こんなに整って見えるのか」と思った
ステキな光景でした。

お気に入りのポストカードを
何枚ずつにしようかとても迷いました。

日本テレビ

「みんなのミュシャ」展公式サイト。2019年7月13日~9月29日、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで開催!…

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