お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

『国宝の殿堂 藤田美術館展』 レポート【奈良国立博物館】

藤田美術館蔵 国宝 全9件を公開
「国宝の殿堂 藤田美術館展」
曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき

2019年4月13日(土)~6月9日(日)
奈良国立博物館

あの“曜変天目茶碗”・“地蔵菩薩立像”が
とうとう目にすることができると楽しみの
『国宝の殿堂 藤田美術館展』に行ってきました。

後期の展示期間でした。

大阪市の中心部にある藤田美術館は、国宝9件、重要文化財53件を含む世界屈指の日本・東洋美術のコレクションを所蔵する美術館です。約2千件におよぶコレクションは、茶道具、墨蹟、水墨画、能装束、絵巻、仏像、仏画、仏教工芸、経典、考古資料など多岐にわたります。藤田美術館が所蔵する曜変天目茶碗をはじめとする国宝・重要文化財の名品を紹介しつつ、同館所蔵の仏教美術に焦点をあてたものです。
藤田傳三郎(1841~1912)
幕末の長州・萩(現山口県萩市)生まれ

明治初頭から大阪で事業を興し、土木建築、紡績、鉄道、電気、新聞など、近代日本の基礎となった産業に、また大阪財界の発展に大きな功績を残しました。事業に邁進する一方で、古美術、特に茶道具に対する鑑識眼は卓越しており、能や茶道をはじめ、日本文化を愛好する文化人でもありました。明治維新後の社会変動により、仏教美術品をはじめとする歴史的な文化財が海外に流出していることを憂慮し、膨大な私財を投じて美術品の収集と保護に努めました。

展示室に入る流れ

展示室に入る前に

「曜変天目茶碗」を“最前列”で観るには、
列に並んで展示室に入るようになっていました。

この列に並ぶと、
まずは曜変天目茶碗を観る場所に行くようでした。

ちなみに、
最前列の列に並びませんでしたが

行った日は観ていらっしゃる後ろからでも
ゆっくり観ることができました。

ただ人が多いと、
曜変天目茶碗だけの部屋の前を
通り過ぎてしまいそう。
気がつくことができて助かりました。

第1章 曜変天目茶碗と茶道具

藤田美術館のコレクションの中でも特に有名なのが、茶碗をはじめとする茶道具のコレクション。明治期の政財界の有力者の中には、茶の湯をたしなむ数寄者と呼ばれる人々がおり、彼らが明治維新によって衰退した茶道の復興をになっていました。藤田傳三郎もまた茶人であり、事業の傍ら茶道具の収集にも情熱を傾けました。

交趾大亀香合

陶製
中国・明(十七世紀)亀の形をした香合で、千利休ゆかりの品と伝えられています。藤田傳三郎が長きに渡り憧れ続け、亡くなる直前に入手した品 香合。

国宝 曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)

【曜変天目茶碗】

陶製
中国・南宋(十二~十三世紀)

現存するものは世界に三椀(京都・大徳院龍光院蔵、東京・静嘉堂文庫美術館蔵、大阪・藤田美術館)しかないと言われる名椀です。このような文様が現れる理由は、未だに完全には解明されておらず、再現は不可能とされています。藤田美術館蔵の本品は、徳川家康が所蔵し、これを譲り受けた水戸徳川家から藤田家に入り、今日に伝えられた国宝中の国宝で、これまで数度しか館外に出たことのない至極のコレクションの一つです。

輪っかのような模様の周りが瑠璃色に光り輝いている。
縁のすぐ下がくびれている。
天目という形をしたお茶碗の特徴。
“曜変天目茶碗”だけの展示室は、照明がほとんどない中でスポット照明をあてられていました。見る角度によって、模様や色が変わって見えました。

第2章 墨蹟と古筆

藤田美術館には、書跡の重要文化財指定品が数多くあります。そのうち掛け軸にされた漢詩や和歌は、茶室の床の間に掛けられる茶掛として用いられました。茶の湯の世界では、禅僧の書である墨蹟が重視され、中国や日本の水墨画とともに珍重されました。また、古筆と呼ばれる和歌などの名筆も茶室で鑑賞されました。

国宝 柴門新月図

紙本墨画
室町時代 応永十二年(1405)

下方に描かれた絵の画題にちなんだ漢詩を寄せ書きした掛け軸で、詩画軸といいます。詩画軸は禅僧の間で流行しましたが、これはその現存最古の作例です。

国宝 深窓秘抄

彩牋墨書
平安時代(十一世紀)

歌人として名高い藤原公任(966~1041)が、十一世紀初頭に秀歌を集めて編んだ私撰和歌集。

第3章 物語絵と肖像

社寺の由来や祖師の伝記を描いた説話・絵巻などの物語絵や、祖師の肖像画は、社寺の根本に関わる大事な什宝でしたが、これらも明治維新を機に社寺から流出する憂き目に遭っておりました。藤田傳三郎が、美術品収集を始めた理由として、明治初期にこうした美術品がないがしろにされている状況を憂慮、それらの散逸を防ぐのが傳三郎の目的だったといいます。

国宝 紫式部日記絵詞

紙本著色
鎌倉時代(十三世紀)

平安文字の名作「紫式部日記」を絵画化した絵巻。引目鉤鼻の人物や銀箔で装飾された料紙によって、宮廷の雅な世界を華麗に表現しています。

国宝 玄奘三蔵絵

紙本著色
鎌倉時代(十四世紀)
(全12巻のうち4巻を展示)

西遊記の三蔵法師のモデルともなった唐代の高僧、玄奘三蔵の生涯を描いた絵巻。鮮やかな色彩た人物・景観の描写に優れた鎌倉時代を代表する絵巻です。

国宝 両部大経感得図

藤原宗弘筆
絹本著色
平安時代 保延二年(1136)

両界曼荼羅の曲拠となる『大日経』と『金剛頂経』をめぐる説話を描いたものです。雄大な景観描写と柔らかい描線は、平安時代やまと絵の特徴を示しています。

浄土五祖絵

紙本著色
二巻(善導巻)(道綽巻)
南北朝時代(十四世紀)

法然は浄土の血脈として、曇鸞、道、善導、懐感、少康という、中国の北魏から唐にかけての五名の僧を五祖として示した。これを浄土五祖と呼び、法然が選定した祖師として門下や浄土案内で重視された。

一遍上人像絵伝模本 巻第十二

一巻(十二巻のうち)

紙本著色
江戸時代(十七世紀)
一遍上人絵伝(一遍聖絵)全十二巻をほぼ忠実に写した模本

一遍上人絵伝(一遍聖絵)は、時宗の開祖・一遍智真(1239~89)の生涯を絵画化した高僧伝絵巻の名品であり、時宗総本山の神奈川・遊行寺(清浄光寺)に伝わる。

春日明神影向図 高階隆兼筆

絹本著色
鎌倉時代 正和元年(1312)

貴人の乗る御車一台。
貴人の顔は霞にまぎれ、確認できない。

円相のなかに仏菩薩が五体、表されている。向かって右から釈迦如来、薬師如来、地蔵菩薩、十二面観音、聖観音。この五体は、春日社本殿(第一~㈣殿)および若宮の本地仏と考えられる。

鷹司冬平(1275~1327)が夢にみた春日大明神の姿を描かせた品。

大江山酒呑童子絵巻 菱川師宣筆

三巻

菱川師宣筆
紙本著色
江戸時代 元禄五年(1692)

源頼光とその四天王(綱、公時、貞光、季武)、藤原保昌の六人の武士たちが、丹波国大江山に住む酒呑童子を退治するもの物語を三巻にわたって描く。

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第4章 仏像

藤田美術館のコレクションには、奈良ゆかりの仏教美術が多く含まれます。

地蔵菩薩立像 快慶作

木造 彩色・截金
鎌倉時代(十三世紀)

彩色に截金を混じえた多彩な文様が目を引く地蔵菩薩像。

湧雲上の蓮華座に乗り、右足を前に踏み出す姿の地蔵菩薩は、春日三宮の本地仏として衆生救済のために来迎する姿をあらわすと考えられている。足ほぞに「法眼快慶」の銘があります。繊細かつ優美な快慶晩年の作風がよく表れています。興福寺伝来であることが明治期の古写真から明らかになっています。

空也上人立像

木造 彩色
南北朝~室町時代(十四~十五世紀)

平安時代中期に阿弥陀信仰と念仏を弘めた空也(903~72)の像。

第5章 尊像と羅漢

藤田美術館のコレクションのうち、仏教の如来や菩薩を描いた、いわゆる仏画には、大型の掛軸や額装にされた尊像や曼荼羅、十六幅セットの羅漢図や、堂内の内陣を飾っていた柱絵があります。こうした作品のバリエーションや規模の大きさからも、藤田家の美術品収集が、個人的な趣味のレベルを超えたもので、文化財保護と公開を目指した博物館的な収集であったことが感じられます。

仏像彩画円柱

館外初公開

八本
木造 彩色
鎌倉時代(十三世紀)

奈良・西大寺伝来とされる全長3メートルの柱。全部で8本あり、仏堂内部の柱と思われます。創作当初の彩色がよく残る点でも貴重です。

薬師三尊十二神将像

絹本著色
鎌倉時代(十三世紀)

正方形に近い画面に、薬師如来と日光菩薩、月光菩薩、それを取り囲む十二神将を描く。薬師如来は二重光背を負い、宣字座の上に右脚を上に結跏趺坐する。右手は胸前で第一、四指を捻じ、左手は腹前に置いて薬壺を載せる。

當麻曼荼羅

絹本著色
鎌倉時代(十三~十四世紀)

當麻曼荼羅は、極楽浄土図を中心とした『観無量寿経』の絵解きを描く絵画(観無量寿経変相図)で、奈良・當麻寺に奈良時代より伝来する綴織當麻曼荼羅(根本曼荼羅)を原本とすることから「當麻曼荼羅」の名で呼ばれる。

観音三十三身像

紙本著色
各 縦115,8 横38,0
室町時代 嘉吉三年(1443)

『法華経』観世音菩薩普門品に説く、観音菩薩が衆生を救済する際に姿を変えて現れるという三十三の応現身を全三十三幅の各幅上部に描き、その多くは白衣をまとういわゆる白衣観音の姿に表される。さらに各幅の下部には、中国明代・洪武二十八年(1395)の年記をもつ『出相観音経』から引用したとみられる観音の救済と説法の場面を表している。

こちらの展示期間は、「第1~11幅」「第12~22幅」「第23~33幅」に分けられていて、真ん中の期間の展示を観せていただけました。

ズラリと並ぶどの観音様のお姿も光景も美しく、凝視できないけれどそこにある幸せを感じました。3回の展示に分けられてこれですから、三十三幅だったらどうなるでしょう。十一幅でもすごい世界を観ている感じがしました。

第6章 荘厳と法具

仏教美術には、仏典や仏像、仏画のほかに、仏像や仏舎利などを収める厨子や、仏堂内を飾る荘厳具、経典を入れる経箱、法会で用いる仏具など、様々な工芸品があります。

木工・漆工・金工・染織による仏教工芸の数々。

春日厨子

〔厨子〕木製 黒漆塗 彩絵
〔神鹿〕木造 彩色
室町時代(十五世紀)

内部に木製彩色の神鹿像を奉安する厨子。

三方開春日厨子

木製 黒漆塗 彩絵
奥壁画は絹本著色
南北朝時代(十四世紀)

正面及び両側面が観音開きとなる厨子。

春日厨子(黒漆塗舎利厨子)

〔厨子〕木製 黒漆塗 彩絵
〔神鹿〕木造 彩色
南北朝~室町時代(十四~十五世紀)

正面が観音開きに、両側面が片開きになる奥行きの浅い厨子。正面の扉は向かって右に“不動明王”、左に“愛染明王”を表し、両側面の扉には向かって右に“地蔵菩薩”、左に“阿弥陀如来”をそれぞれ乗雲の姿で表す。奥壁にも彩絵が施されており、中央に輪宝に載る円相中に、右手に宝剣を持し、左手に五輪塔を載せて蓮台上に坐す“弘法大師”を配し、頭上に明星を表している。傍らには宝珠を戴く“善女龍王”が随侍している。上方には三山形式の山が描かれ、中央の山頂には宝珠が輝き、左右から“龍”がこれを捧げるように表されている。龍の背の上の虚空には“金色の月”と、周囲を金色で囲んだ“赤色の日輪”が描かれている。

国宝 花蝶蒔絵挟軾

木製 黒漆塗 金・錫蒔絵
平安時代(九世紀)

挟軾は体の手前に置く肘つき。
表面の仕上げには、金と錫を使った蒔絵が施され、蒔絵の初期の作例として貴重です。薬師寺の八幡宮に伝来したといいます。

国宝 仏功徳蒔絵経箱

木製 黒漆塗 金・銀蒔絵
平安時代(十一世紀)

蒔絵を入れるための木製の箱。
側面には、法華経の説話の場面が蒔絵で描かれています。保存状態も良好で平安時代の蒔絵として貴重です。

金銅密教法具

銅製 鍍金
鎌倉~室町時代(十三~十四世紀)

第7章 仏典

明治維新という社会変革の波の中で、幕府の藩の庇護を失った神社仏閣は困窮し、奈良時代から平安時代に書写された貴重な仏教経典が、有力寺院から流出していました。

奈良時代から鎌倉時代にかけての仏教経典。

国宝 大般若経(薬師寺経)

紙本著色
奈良時代(八世紀)

黄ないし茶褐色の料紙を継いで、淡墨で縦横の界線を引き、濃墨で本文を書いた巻子装の『大般若経』(正式には『大般若波羅蜜多経』)の写本である。巻頭の主題部分に、朱印「薬師寺印」が二顆捺され、第一紙紙背には墨印「薬師寺金堂」が捺されており、これが薬師寺伝来であることを示している。

放光般若経巻第二十六(五月一日経)

紙本墨書
奈良時代 天平八年(736)

光明皇后が亡き父母(藤原不比等・縣犬養橘三千代)のために書写させた一切経、「五月一日経」のうちの二巻。巻尾に光明皇后の願文が書き加えられることになり、その日付が五月一日であったため「五月一日経」と称される。

第8章 面と装束

藤田傳三郎は、茶道とともに能も愛好し、自らも五十歳を過ぎて本格的に能を習いました。コレクションのの面には、奈良時代にさかのぼる伎楽面など古い面が伝えられ、能装束にも名品が揃っています。

伎楽面・舞楽面・能面・能装束。

第9章 多彩な美の殿堂

コレクションには「唐鞍」や「小太刀」といった様々な工芸品や、「埴製枕」のような考古資料など、多彩なものが含まれています。

なんと“柱”まで登場して、「残っていればどれだけの仏堂だったのだろう」と。仏像、仏画、荘厳、法具ととびっきり素晴らしいものが並び、「なんと素晴らしいものばかりの空間なのだ」と思える幸せな空間となっていました。
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