お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

『国宝 一遍聖絵と時宗の名宝』 レポート【京都国立博物館】

特別展
時宗二祖上人 七百年御遠忌記念
「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」

聖絵12巻全巻公開!

2019年4月13日(土)~6月9日(日)
京都国立博物館

踊り念仏で知られる“時宗”は、宗祖一遍(1239~89)が鎌倉時代に開いた宗派です。“一遍”は念仏をとなえることで誰もが往生をとげられると説き、全国を行脚(遊行)して、念仏札を配り(賦算)、布教につとめました。この時宗を教団として整備し、大きく発展させたのが二祖の“真教”(1239~1319)でした。2019年に“真教”の七百年遠忌を迎えるのを記念して、時宗の名宝を一堂に会する展覧会を開催いたします。

全国各地を遍歴した“一遍”の生涯を描いた国宝「一遍聖絵」をはじめ、“真教”の足跡もつづられた「遊行上人縁起絵」、一遍や真教ら歴代祖師の肖像画や肖像彫刻など、時宗の名宝の全貌を。

京都国立博物館の
「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」に行って来ました。

音声ガイド

〔一遍パート〕:遊佐浩二(声優)
〔真教パート〕:速水奨(声優)

1章 浄土宗から時宗へ

一遍の“阿弥陀浄土にたいする信仰”はどのようにしてつくられたのか。

中国・唐時代の“善導”(613~81)によって大成され、日本で独自の展開をとげた“浄土教の教え”。

筑前国大宰府や肥前国清水において学んだ“浄土宗の西山義”をはじめ、信濃国善光寺に参籠のおり目にした阿弥陀如来と感得した“二河白道図”、紀伊国熊野本宮に参籠して神託をうけた“熊野権現”など、さまざまな人物や場所が影響している。

二河白道図

二河白道図は、唐・善導『観経疏』に典故をもつ。“法然”が『選択本願念仏集』でこの比喩を用いて“念仏の意義”を説いたことから、浄土宗で生み出された画題。浄土宗西山派の流れを汲む“一遍”もこれを尊崇。萬福寺本より、更に時宗の独自性を強めた形式となっている。萬福寺本は、時宗系二河白道図の伝存最古本として重要。

人は、東の岸(現世)にあって
西岸は極楽浄土を象徴する。

その大河には、
東岸から西岸に至るたった1本の
細い白い道(=念仏)が通じている。

此土の白道端には送り出そうとする釈迦如来。
彼岸には往生者を迎えにくる阿弥陀如来像。

重要文化財 二河白道図 島根・萬福寺蔵

なんと美しく
分かりやすい表現なのだろうと
惹き込まれました。

“釈迦如来”に送り出され
“阿弥陀如来”にむかって
白い一本の線。

線で分けられた左右の色がちがい、
その中に“蓮の花”が。

蓮が何を意味しているのか。
いろいろ想像をしてみたり
置き換えて考えてみたり。

これからもこの作品の存在は
なんども思い出すと思います。

2章 時宗の教え 一遍から真教へ

時宗は、初祖の一遍が熊野権現から神託をうけた文永11年(1274)を立宗。

“一遍”が各地を遊行し、各地で南無阿弥陀仏と書かれた念仏札をくばる賦算や、輪になって踊りながらひたすら阿弥陀の名を唱える“踊念仏”などを通じて、一般の庶民から熱狂的に支持された。

一遍は遊行を自身一代限りと考えていたようだが、一遍没後もその教えに心を寄せ人々の意をくんで、二祖の真教(他阿弥陀仏)は教団として組織化をはかった。

両上人の肖像や名号にくわえ、遊行の様相を偲ばせる絵巻類、阿弥衣や鉦鼓などの道具類、それらを納める入れ物であり夜にやすむ際には同行する男女の境ともなったという十二光宮などから、時宗初期の信仰の姿をうかがう。

六字名号

「神奈川 清浄光寺(遊行寺)」からの六字名号は、前期に“一遍上人筆”、後期に“真教上人筆”の展示。
一遍上人筆の「南無阿弥陀仏」は、「弥」の弓偏が三日月のような形をしていました。

遊行

阿弥衣(あみえ)

麻(編布)
丈119,0 総155,0
室町時代 大永元年(1521)
兵庫・興長寺
阿弥衣とは、時宗の独特の法衣である。
前期は、
「兵庫・興長寺 室町時代 大永元年(1521)」の阿弥衣。麻(編布)とのことですが、生地の厚みがあるように見えました。

蓮華形下駄

木造漆塗
京都・正法寺

宝珠文種字鉦架

木造漆塗
神奈川県立歴史博物館
鉦架は、鉦鼓を懸架し、身に着けて用いるための架台。

鉦鼓

銅・鋳造
滋賀・蓮華寺

持蓮華

木造
神奈川・清浄光寺

時宗の独特の仏具。
茎の先に未開花の蓮の花蕾(未敷蓮華)を模った形状をしており、念仏の際に合掌した手で保持することからこう呼ばれる。

清浄光寺に伝わったこの大小二本の持蓮華は、一方を一遍、他方を他阿真教が製作したと伝わるもの。

十二光宮

木製漆塗
愛知・称名寺

遊行の道具を入れる小型の笈。
二段の棚のような調度で、背負うときはひもで体をしばった。

二祖真教

重要文化財 真教上人書状(遊行歴代他阿弥陀仏書状類)

京都・長楽寺

真教上人が寿阿弥陀仏にあてた自筆の手紙。命長らえて再開する時もありましょうが、これが叶わなければ浄土で対面しましょうとの内容。

重要文化財 遊行上人縁起絵

兵庫・真光寺
一遍だけでなく、二祖真教の事績も収録する点に特徴。
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色付き蓮華鉦吾(漆焼付け) 漆焼付着色で宣徳色に仕上げた”蓮華鉦吾“です。 その音色はそのまま、落ち着い […]…

3章 国宝 一遍聖絵の世界

“旅”を描いた鎌倉時代絵巻の傑作
「一遍聖絵」全12巻を一堂に展示

日本各地を遊行し、多くの人々に救済を施した“一遍”。この偉大な聖の生涯を、全十二巻四十八段に及ぶ長大な絵巻として表した作品が、国宝「一遍聖絵」である。

巻十二の奥書に、一遍十回忌にあたる正安元年(1299)八月二十三日の日付が記されており、これを作品の成立した時期とみなす。

巻2 奇石がそびえる伊予国(愛媛県)で修業

やまと絵と漢画が融合した中世日本の壮大な風景

巻3 熊野で熊野権現より神託

時宗ではこれを開宗と定めています。

巻6 富士山が描かれた場面

巻12 一遍臨終の場面

名もなき人びとの営みとともにあった一遍

4章 歴代上人と遊行 時宗のひろまり

“二祖真教”は、相模国の当麻に道場を開いた。嘉元二年(1304)にはそこに独住し、遊行上人の座は“智得”へと譲られた。その後も遊行上人は“呑海”、“安国”、“一鎮”、“託何”らが代々継承し、京都の七条道場を拠点としながら全国各地を遊行してまわった。

肖像彫刻、肖像絵画や墨跡

歴代遊行上人の肖像彫刻は、七条道場が“運慶”の末裔たちが属した七条仏所に隣接していたこともあり、七条仏師など当時の有名仏師によるものが多い。

“長安寺”に移された七条道場金光寺文書には、歴代の遊行上人の書状がそろう。

重要文化財 真教上人倚像

木造彩色
京都・長楽寺

七条道場金光寺は、かつて京都の七条東洞院に存在した時宗寺院で、時宗遊行派の京都における重要な活動拠点であったが、明治40年(1907)に京都東山の長楽寺へ合併となった。それとともに、歴代遊行上人の肖像をはじめとするゆかりの宝物も、同寺へと移された。

金光寺の創建は、運慶の三男康弁が自らの宅地を遊行二代の真教上人に寄進したことに始まるといい、正安3年(1301)のことと伝えられている。しかし、当時康弁はすでにこの世にはなく、おそらくは康弁末裔の七条仏師から寺地を譲られたものでなのであろう。そのことを示すように、同寺伝来の歴代遊行上人像は、いずれも七条仏所の主宰者によって製作されている。

第4章では“像”が多く展示されていて、とびぬけて美しいていねいな彫りの像でした。大切な方の像だからこそという丁寧さもあったのかと思いました。

5章 時宗の道場とその名宝

時宗では寺院を、修行の場ということから道場と呼ぶ。

本章では、それら時宗道場のなかで、藤沢および京都、滋賀の道場に伝えられた作例を中心に、時宗道場ゆかりの名宝の数々を展示。

国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」

岩佐又兵衛筆 六曲一双

紙本金地著色
東京国立博物館

時宗道場が描かれている。
現在長浜に移転した御影堂新善光寺が五条大橋西詰に描かれ、名物の奥義を僧尼たちが売っている姿がよくわかる。

重要文化財 後醍醐天皇像

絹本著色
神奈川・清浄光寺(遊行寺)

繧繝縁の上げ畳を載せる礼盤に朱色の八葉蓮華を敷いて坐り、冕冠をかぶり豊の上に袈裟をまとう。右手に五鈷杵、左手に五鈷鈴という密教法具をとり、これは大日如来から教えを受けた金剛薩埵の手勢と等しい。画面上部に「天照皇大神」「春日大明神」「八幡大菩薩」の神号を書かれた短冊形が貼られる。

行快作 阿弥陀如来立像

京都・聞名寺

毘沙門天立像・恵比寿神坐像・大黒天立像(秘仏)

京都・極楽寺蔵

毘沙門天は本尊で、恵比寿神と大黒天の財宝神とともに三尊を構成する。宝塔を持たず腰に手をあてた、いわゆる鞍馬寺式の毘沙門天。

“ご本尊”であり“秘仏”なのに、とても間近な距離でみせて頂けました。
\すべてを捨てて、みな踊れ!/
と言われると、

「どういう状況なのだろう?」
と思っていました。

それが、
「二河白道図 萬福寺本」を見て
気持ちが落ち着くことができ
足を進めていきました。

そこで
人間らしいと思ったのが、
師弟愛の深さが印象的でした。

それも
日本全国かなり広くに遊行されたり、
人々の待ち望み押しかける切実な思い
に応えるという活動ゆえだったのかと。

活動的なこともあり
時宗の勢いというものを感じましたが、

「一遍聖絵」からも分かるように
どれだけ求められたかもあったということが
心に深く残りました。

京都国立博物館の概要と年間の主だった展示企画、イベント等をお伝えしています。…

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