お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】
特別展 長谷川等伯

没後400年 特別展『長谷川等伯』【京都国立博物館】

没後400年 特別展
長谷川等伯

2010年4月10日(土)~5月9日(日)
京都国立博物館

展示27日間という「没後400年 特別展 長谷川等伯」の前期に行って来ました。

水墨画の最高峰「松林図屏風」、金碧障壁画の至宝「楓図壁貼付」を描き、豊臣秀吉・千利休を魅了した絵師、長谷川等伯(1539 年~1610年)。

2010年は等伯没後400年にあたり、これを記念し、国宝3件、重要文化財30件をふくむ等伯の代表作のほぼすべてが公開される大回顧展です。

特別展 長谷川等伯

国宝『楓図壁貼付』 京都・智積院

京都国立博物館が近づくにつれ、いつもになく人の多さを感じました。駐車場も平日のお昼頃で満車。入場制限で、40分でした。

特別展 長谷川等伯

第1章 能登の絵仏師・長谷川信春

等伯は、縁戚で染色業を営む長谷川宗清の元へ養子に迎えられました。養祖父、養父から絵の手ほどきを受け、絵師 信春として歩み始めました。能登地方を中心に、信春時代の仏教絵画が残されています。
等伯も、熱心な法華信者でした。

展示品 : 釈迦多宝如来像(重要文化財) など

第2章 転機のとき ―上洛、等伯の誕生―

等伯は33歳の時に、妻と子息を伴い都に移住しました。千利休を施主として増築・寄進された大徳寺三門の壁画制作を要請され、また同寺の塔頭・三玄院の方丈にも水墨障壁画を描くことになり有名絵師の仲間入りを果たしました。

展示品 : 
十六羅漢図 石川・霊泉寺
山水図襖  京都・圓徳院(重要文化財) など

第3章 等伯をめぐる人々 ―肖像画―

等伯は、信春と名乗っていた頃に法華宗の僧侶、武将の肖像画を手がけました。絵師として僧侶、武将、町衆と関わりを持ち、肖像画を手がけ、交流を重ねていったのでしょう。

展示品 : 千利休像 京都・表千家不審菴(重要文化財) など

『千利休像』は、没後四年を経て描かれた肖像画だそうです。

第4章 桃山謳歌 ―金碧画―

等伯は、造営奉行の前田玄以を頼り、狩野永徳一門が行なっていた御所障壁画制作への割り込みをはかり寸前で阻止されます。ほどなく豊臣秀吉から作画命令を受けます。三歳で没した秀吉の愛児・鶴松の菩提を弔うべく創建された祥雲寺に、金碧障壁画を描き、大事業を成功に導きました。

展示品 : 
楓図壁貼付   京都・智積院(国宝)
松に秋草図屏風 京都・智積院(国宝) など

京都会場のみの展示の弁慶昌俊相騎図絵馬

弁慶昌俊相騎図絵馬
京都・北野天満宮
(重要文化財)
板地金箔押濃彩の絵馬で義経の命を狙った土佐坊昌俊を弁慶が捕らえ、愛馬大黒に乗せて堀川殿に引き連れていく場面を描かれています。“国宝・涅槃図”の向かい側に展示されています。

横4mを超える大きさということもありますが、金箔と彩色と接近する二人と馬の動き。飛び出てくるような迫力を感じる作品でした。

第5章 信仰のあかし ―本法寺と等伯―

等伯が生涯に渡り、篤く法華宗を信仰した証が本法寺に数多く残されています。本法寺の客殿や仁王門の建立施主となるなど多くのものを寄進しました。
仏涅槃図
京都・本法寺(重要文化財)
26歳急死した子息・久蔵や養父母たちの名が記されており亡き親族の供養のために制作され、等伯によって本法寺に寄進されました。当時にはめずらしい舶来の洋犬が描きこまれています。

長谷川等伯が61歳の時に描いた“京都三大涅槃図”のひとつです。
京都三大涅槃図とは、東福時の明兆の作大徳寺の狩野松栄の作、そして本法寺の長谷川等伯の作となります。

縦10m、横6mの大きさで、その展示室に入るなり色彩に惹き付けられるのですが全体像は一目では確認できないのが嘘ではないぐらいの大きさです。というのは、博物館の天井の高さではまだ全然足らないので写真屋さんで記念写真を撮る時に、背景・床が一体に見えるように垂らし伸ばしてあるスクリーンのような展示となっていました。下半分は、水槽を覗き込む様な姿勢で見ることとなりました。

本法寺の天井は、どんなに高く大きいのでしょうか?寄進される前から天井が高かったのでしょうか。高い天井にあわせて制作されたので、これほど大きな涅槃図なのでしょうか。これほど大作に取り組まれたその想いは如何ほどかと思うと胸が熱くなりました。

本法寺では、毎年春のみ公開されています。
今年は、「没後400年 特別展 長谷川等伯」に貸出のため実物大の写真が展示されたようです。

第6章 墨の魔術師 ―水墨画への傾倒―

祥雲寺の障壁画制作において独自の魅力的な金碧画様式を披瀝した等伯は、水墨画制作を画事の中心に据えていきました。

展示品 : 
竹林猿猴図屏風 京都・相国寺(重要文化財)
禅宗祖師図襖  京都・天授庵(重要文化財)
樹下仙人図屏風 京都・壬生寺(重要文化財) など

竹林猿猴図屏風

京都・相国寺
(重要文化財)

等伯は、能登から京都に進出後、中国・南宋時代の著名な牧谿筆「観音・猿鶴図」三幅(大徳寺)と出会いました。薄明にただよう微妙な光、湿潤な大気の表現という牧谿画のもつすぐれて希有な表現を直接学習する機会を得ました。

影響を受けつつも等伯の絵として表現され、母猿と小猿に加えて父猿を描いた屏風の家族愛と対に、失った家族を捜して鳴く鶴をあえて登場させない竹林をもってくるというところにとても魅力を感じました。

愛らしい猿は仕草も可愛らしいのですが、何といっても猿の毛が、柔らかいふわふわの毛が表現されています。淡墨と金泥の具合が、とても上品でいい感じでした。

禅宗祖師図襖  

京都・天授庵(重要文化財)
説いておられるお話の1シーンを描かれているのですが、人物がわかるようなインパクトを受けました。

第7章 松林図の世界

松林図屏風

東京国立博物館

「描かずにあらわす」という技法で描かれています。等伯の代表作であり、わが国の水墨画の最高峰とまで評されています。

人の多さに圧倒されつつ展示物を観始めた特別展でしたが、最後の展示物「松林図屏風」の前では霧の濃い森の中にたたずんでいるかのような感覚になりました。
特別展 長谷川等伯

国宝『松林図屏風』 東京国立博物館

「没後400年 特別展 長谷川等伯」 観覧を終えて

特別展で、等伯の世界に惹き込まれていったポイントが2点。

中国名家の牧谿・玉澗・馬遠・夏珪の影響を受けつつも等伯の描こうとする世界を明確になっている作品であったり、将来を期待されていた子息の死などによる哀しみの表現が作品の深さと合わさっているポイントです。

もう1点。等伯の特徴とも言えるのではないかと思うのですが、迫力ある派手な金と濃い色づかいであったり力強い同じ濃さの筆での表現かと思えば、水墨画の筆の濃淡が見事であったりとまるで違う作者の作品のように見える表現ができるのもとても魅力だと思いました。

人の多さに圧倒されつつ展示物を観始めた特別展でしたが最後の展示物「松林図屏風」の前では霧の濃い森の中にたたずんでいるかのような感覚になりました。

今回の音声ガイドは、お話も音楽も大変良かったです。

観覧日記について

ブログをご覧頂きましてありがとうございます。

博物館・美術館の観覧後に全体を通してブログで振り返っているのですが、全体を通す事によりようやく「この展示で表現されようとしていたもの」というものが自分なりに見えてくる部分があり理解できます。

説明文も、あちらこちらの文章を理解して色々調べたりしながらブログで解釈した言葉にまとめています。日記を書き終えると、観覧した充実を感じます。少しでもおすそわけできる表現を目指して書ければと思います。

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