お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

『THE ハプスブルグ展』レポート【京都国立博物館】

特別展覧会
THE ハプスブルグ展
2010年1月6日(水)~3月14日(日)
京都国立博物館

あのオーストリア皇妃エリザベートがやってくる。
楽しみに待っていた「THE ハプスブルグ展」。

日本とオーストリア・ハンガリー二重帝国の国交樹立から140年。
これを記念し、ウィーン美術史美術館(オーストリア)とブダペスト国立西洋美術館(ハンガリー)の所蔵品から、ハプスブルク家ゆかりの絵画と工芸の至宝、約120件が展観されます。明治天皇が皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に友好のしるしとして贈った画帖と2基の蒔絵棚が、日本に初めて里帰りします。

日程が機会を逃してしまいそうなので
開幕初日に京都国立博物館に出掛けました。

表の看板

華やかな並びです。

左から

アンドレアス・メラー≪11歳の女帝マリア・テレジア≫
ディエゴ・ベラスケス≪白衣の王女マルガリータ・テレサ≫
フランツ・クサファー・ヴィンターハルター≪オーストリア皇妃エリザベート≫

ゲート前の看板

頬がふっくらしたお人形のような愛らしい姿の二人です。

左から

ディエゴ・ベラスケス≪白衣の王女マルガリータ・テレサ≫
ディエゴ・ベラスケス≪皇太子フェリペ・プロスペロ≫

平常展示館の建て替え中なので、後ろにクレーンが見えます。

建物の正面

建物の正面には、今まさに剣を振り下ろそうとする姿の
バルトロメ・エステバン・ムリーリョの

≪悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル≫でした。

大天使ミカエルは、宗教改革に対するカトリック教会の
戦いのシンボルとなっています。

さあ、いよいよ「THE ハプスブルグ展」に踏み入れます。
印象に残った作品の感想を少し書いてみようと思います。

明治天皇から皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に贈られた
画帖と蒔絵棚

まず最初の部屋に入ると「明治天皇から皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に贈られた画帖と蒔絵棚」が陳列されていました。色紙ぐらいの大きさの江戸絵画の数の多さと、棚に面いっぱいの図柄の繊細な蒔絵に圧倒されました。

「今日は何を観に来たのだっただろう。」そのように思えるぐらいに、日本そのままの数々でした。ちょんまげ姿・着物姿・木の橋・三味線・田植え・稲刈り・提燈などまったくの日本美術の世界の贈り物となっていました。興味深いのは、画帖が制作されたのが明治2年。明治維新直後で、幕末期画壇の縮図といえるのだそうです。

贈られたフランツ・ヨーゼフ1世の目には、江戸の町の様々な人々の生活の姿はどのように映ったのでしょうか。

イタリア絵画

ハプスブルグ家絵画コレクションの最初に、皇帝たちが宮廷文化の模範として愛し続けたイタリア絵画

ティツィアーノ(工房)
≪キリストの埋葬≫

キリストが、今棺のような中に納められようとしている瞬間。キリストは、手の傷のみできれいな体ですが周りの人たちの表情より嘆き悲しみが伝わってくる絵でした。

ヴェロネーゼ(本名パオロ・カリアーノ)
≪フロフェルネスの首を持つユディット≫

今回の展示では、着飾った女性が男性の切断した頭部を持っている絵が数点ありました。残酷さを観覧者の目を着飾った女性にそらすという意図があるのだそうです。

グイド・カニャッチ
≪クレオパトラの自害≫

真ん中に赤い椅子に座った状態で右手が毒蛇に噛まれて自害した姿のエジプト最後の女王クレオパトラ。髪形など西洋的な絵のように思いました。

スペイン絵画

ハプスブルグ家は、カール5世以来、長くスペインを統治

バルトロメ・エステバン・ムリーリョの作品が3点

“聖ヨハネ”は大工仕事中で、“マリア”は針仕事中の前で二人の幼い男の子が十字架を組んでいる
≪聖家族と幼い洗礼者聖ヨハネ≫

数年前のプラド展で観たムリーリョの「貝殻の子どもたち」を思い出されますが、手にしているのは十字架だということ。何気なく十字架の下の地面に落ちている紙切れのような帯。そこには、「見よ、神の子羊」と書かれているのだそうです。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョと工房
≪幼い洗礼者聖ヨハネ≫

描かれた少年ヨハネは、毛皮の衣姿です。のちにヨハネが荒野での生活を暗示しているのだそうです。こちらもプラド展での少年の姿に似ていますが、ウェーブのかかった肩までの髪で、今回の絵画は少年というよりも神々しさを感じました。

ハプスブルグ家の肖像画と武具コレクション

エリザベート
フランツ・クサファー・ヴィンターハルター
≪オーストリア皇妃エリザベート≫

部屋に入ると、見上げるような大きいエリザベートの肖像画に感激やら圧倒されるやら、しかし静かな空気にのまれるようでした。お顔から、ほわんとした感じが伝わってきてミュージカルでのエリザベートのイメージとは全く異なり「本当は、こういう人だったのかもしれないなぁ」と思いました。

エリザベートに向かって左側には、

フランツ・ヨーゼフ1世
戴冠式の礼服姿の
フランツ・シュロッツベルク
≪オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世≫

この配置が「なんとも演出だな」と思いました。
白に赤そして金色。高貴なお姿でした。肩からマリアテレジア勲章の肩帯を身につけておられます。しかし、戴冠式は実現せず、この礼服は仕立てられなかったとか…。

歳を重ねた軍服姿のフランツの肖像画もあります。

ミハーイ・ムンカーチ
≪ハンガリーの軍服姿の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世≫

注目の肖像画に周りを囲まれ部屋の中央には、

≪シャーベット用センターピース≫

豪華なメリーゴーランドのようなたくさんの肖像の入ったセンターピースです。一緒にシャーベットを食べる時に使われたものだそうで、展示室がハプスブルグ宮殿になったような展示配置もいい演出だと思いました。白に金で縁取られ、色合いも淡い赤紫などもポイントになり華やかです。

部屋の奥 左から
マルガリータ・テレサ
幼くして皇位継承者レオポルト1世の未来の花嫁と定められていた王女の肖像画
ディエゴ・ベラスケス
≪白衣の王女マルガリータ・テレサ≫

何度も見ている様に思うのは、マルガリータ・テレサの肖像画は何枚もあって年齢の違う姿を見ていたからのようです。ようやくお人形のようなウェーブのかかった金髪で白のドレス姿の王女にお目にかかれました。近くで見ると筆が粗いように見えますが、少しは離れて見ると的確に見える絵です。

初日の開館すぐだったからでしょうか、脚立を持った腕に腕章をつけたカメラマンさんが鑑賞姿も含めて撮っておられたのはこの絵でした。(その情景を後ろから眺めていました。)翌日、新聞に掲載されていました。

フェリペ・プロスペロ
横の椅子には白い犬が居る愛らしい皇太子の肖像画
ディエゴ・ベラスケス
≪皇太子フェリペ・プロスペロ≫

邪視から守る護符・伝染病を防ぐ琥珀珠・王子の所在を追うための小さな鈴が洋服に付けられています。皇太子は、病弱で幼くして亡くなったのだそうです。

マリア・テレジア
くっきりした二重瞼の美しいお顔。キュッと結い上げられた髪。深い緑の艶のあるドレス。
アンドレアス・メラー
≪11歳の女帝マリア・テレジア≫

装飾品は、髪に一つとあっさりとしたイヤリングだけ。胸元には何も装飾品がないので、余計に美しい肌の色に魅せられました。11歳だからか愛らしさもあり、でもとても意志をしっかり持っていそうな表情でした。特に目に釘付けになりました。今回の展示の中で、一番長い時間見せて頂いていたと思います。

ドイツ絵画

ハプスブルグ家の膝元で活動した作家たちの作品

フランドル・オランダ絵画

宮廷画家たちや、巨匠たちの代表作

ペーテル・パウル・ルーベンス
≪キリストの哀悼≫

キリストの受難と救済が同時に語られており、私的な祈りを捧げるために制作された板絵なのだそうです。藁と布の上に横たわるキリストの遺骸。横には先の曲がった釘が落ちており、十字架にかけられた惨さを伝わります。

ペーテル・パウル・ルーベンスと工房
≪フィレモンとバウキスの家のユピテルとメルクリウス≫

神々の父と神々の使者をもてなすために老夫妻は、自分達のもっとも貴重な財産がちょうを今つぶすために捕まえようとする瞬間です。老夫妻の表情と逃げようとするがちょうの姿の緊張感があり目が離せなくなりました。話の結末は、ガチョウが神々のところへ逃げ込み神々が自分達の正体を現わしたのだそうです。

ダフィットー・テニールス(子)
≪村への襲撃(農民の苦しみ)≫

拳銃を抜いている兵士が、老夫妻の洋服を掴んでいる光景の後ろでは、あちらこちらで農民に拳銃を突きつけている姿が描かれています。歴史的背景になっているのは、スペインの支配に対する北ネーデルランド諸州の解放運動なのだそうです。

美術収集室の美術工芸品

玉が大きいものが使われていたものが多かった印象です。例えば、ラピスラズリの鉢など。ラピスラズリが鉢となるのですから、原石がどれほど大きいものか。それを削り、磨いて出来上がったのでしょう。≪掛時計≫も、果実が大きな紫水晶・碧玉・トルコ石と使われ輝いていました。
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