お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】
交感する神と人の看板

『交感する神と人―ヒンドゥー神像の世界』【国立民族学博物館】

交感する神と人の看板
交感する神と人―ヒンドゥー神像の世界

2023年9月14日(木)~12月5日(火)
国立民族学博物館 特別展示館

神と人がどのようにして交感するのだろう?

ヒンドゥー教の神様ということと、「交感」というキーワードが使われていることに魅かれ国立民族学博物館に行って来ました。

人が、神に愛をもって沐浴させたり着飾らせたりといった働きかけをとおして神像をいとおしみ、神に願いを届けようとする」。ただ願うのではないのだと。

神との距離が想像とちがうだけでなく、看板写真にもなっている“幼子のすがたをした神クリシュナ”は祭壇のブランコの上に祀られ人はゆっくり揺らす…。はじめの展示室で《クリシュナとブランコ》を目にして、家庭での祭壇と供物の説明を読み見するうちに、五感を使いながら過ごす時間をイメージすることになりました。

【展示構成】

第1章 神がみの世界へのいざない
第2章 神がみとの交感
1)交感を行うための祭壇
2)ラーマやクリシュナとの交感
3)シヴァやドゥルガー女神との交感
第3章 交感の諸相
1)つくる
2)飾る
3)見かわす
4)対話する
5)演じる
6)くらしの中の神がみ
第4章 ときの巡り
1)春を迎える
2)雨季の祭礼
3)秋の祭礼
4)秋の実りを祝う
5)寒季の祭礼

ヒンドゥー教のあまたの神がみは、石や金属、土器、陶器などの立像、仮面、絵画や印刷物、タイル、刺繍、さらには絵本、コミック、切手やステッカーなど、さまざまなモノを通じて現れています。これらの神像は人びとが五感を通じて神と交流するための重要な媒体となってきました。

神像との交流の核心には神への「愛」があります。この「愛」には神に愛されるという受動的側面よりも、人が神に愛をもって接近するという能動的、主体的側面が強く表れています。信者は神像を沐浴させたり、着飾らせたりといった働きかけをとおして神像をいとおしみ、神に願いを届けようとします。

この特別展では、インド、ネパールだけでなく日本やヨーロッパでつくられた多彩なヒンドゥー教の神像を展示するとともに、神と人との交流の姿を紹介して、人びとが神がみに捧げる愛や願いのかたちに迫ります。

特別展示館の入り口

第1章 神がみの世界へのいざない

三大神

ヒンドゥー教は三大神を基軸とするとされる。
世界の創造神ブラフマー、御持神ヴィシュヌ、破壊と再創造に関わるシヴァである。

ヴィシュヌ

ヴィシュヌは天界にあり、地上世界に悪がはびこると自らの化身アヴァタール(アバターの語源)を送り込んで悪を滅ぼし世界を浄化する。ヴィシュヌ自体も信仰され、さまざまな像として現れるが、化身の方がより多くの信仰を集めている。十化身のなかでも現代インドで特に人気があるのは、第七番目の化身ラーマ、第八番目の化身クリシュナである。

ラーマ

ラーマは「ラーマーヤナ」神話の主人公で、妃シーターを略奪したランカー島の魔王ラーヴァナ(十の頭を持つ)を滅ぼし、王都アヨーディヤーに凱旋して正義を回復した神として信仰を集める。

クリシュナ

クリシュナは魔王カンサを滅ぼすためヴィシュヌの化身として生まれ、牧畜民のあいだで育ち、さまざまな奇跡を起こし、最終的にカンサを打ち倒す。牧女ラーダーとの熱烈な愛は有名で、ラーダーのクリシュナへの愛はヒンドゥー教的な信仰の手本ともみなされる。クリシュナはまた「マハーバーラタ」神話にも登場し、悪の滅亡に大きな役割を果たす。

シヴァ

シヴァはヒンドゥー教の世界観のなかで、ヴィシュヌと双璧をなす主要神である。彼を主神とする世界観においてシヴァは生命力、再生力の源とされる。

ドゥルガー、ガネーシャ

“シヴァ”はこの世に化身を送ることはないが、そのさまざまな形相が別の神格名で信仰される。

シヴァの妻“パールヴァティー女神”も人気があるが、こちらもさまざまな形相で現れる。ドゥルガー女神やカーリー女神はその代表である。

象頭人身の神ガネーシャはシヴァの息子で、災いを払い福をよぶ神として幅広く信仰を集める。彼は嫉妬深いので、あらゆる儀礼やイベントで第一に招待すべき神とされる。

ブラフマーの配偶神“サラスヴァティー女神”は学芸の神、ヴィシュヌの配偶神“ラクシュミー女神”は富と繁栄の神として信仰されている。

第2章 神がみとの交感

交感をおこなうための祭壇

ヒンドゥー教徒の家庭には必ず、神がみを祀る場がある。独立した部屋がある家もあれば、部屋の隅に棚を設置する家もあるが、さまざまな神像や神の絵を並べてお気に入りの祭壇がつくられる。朝夕、水浴びをして身を清めたあとに神がみへの礼拝がおこなわれる。また家庭では、吉兆な日や祭日に、別に祭壇をしつらえて特別な儀礼がおこなわれる。

像や絵を清め、飾り、芳香のするペーストや花、香煙や灯明などを含むさまざまな供物を捧げることによって、ヒンドゥー教徒たちは神に対して直接的に祈りを捧げることになる。


ヒンドゥー教徒が神と交感する場は、鐘、聖典などを唱える声、歌、楽器といった音にあふれている。


儀礼における水の第一の役割は「清め」である。


インドの宗教文化においてもっとも古い礼拝の形態では、神像をつくらず、火に供物をくべて間接的に神に届けていた。現在でも特別な儀礼の最後には、聖樹の木片、米やゴマ、香類、ギー(精製バター)などを混ぜたものが火にくべられる。

色・香

供物・味

神像礼拝のもっとも基本的なかたちは、芳香する「ガンダ」(香料)、花、香煙、灯明、供物という五つを捧げることからなるが、神を喜ばせるために良い香りが重視されていることがわかる。

バクティ

ヒンドゥー教で、人の神に対する関わり方として特に重要視されるおこないとしてバクティ(信愛)があげられる。バクティとは、簡単にいえば、各自が選んだ神に熱烈な愛を捧げれば罪業から解放され、神と一体化して解脱の境地に至れるという考え方である。バクティを捧げる神はどれでも良いとされるが、ヴィシュヌの化身であるラーマかクリシュナが選ばれることがほとんどである。

クリシュナとブランコ

ブランコに乗っているクリシュナの神像
ヴィシュヌの第八番目の化身であるクリシュナは、愛らしい幼子のすがたをした神としても篤く信仰されている。クリシュナ生誕祭では寺院や家庭の祭壇に、儀礼用のブランコがしつらえられ、幼子クリシュナの神像はその台座の上で祀られる。拝礼では、台座のひもをひいて、ゆっくりとブランコを揺らすのが作法である。

ドゥルガー女神

ライオンにまたがるドゥルガー女神の神像
“ドゥルガー女神”はシヴァの妻“パールヴァティー女神”の別の現れである。パールヴァティー女神はほかに女神ウマー、カーリーなどの姿でも現れる。

第3章 交感の諸相

つくる

いろいろな素材に現れる神のすがたや、タイルや仮面の製作道具を展示。

飾る

神像は神の身体そのものと考えられているため衣服を着せたり、より美しいすがたとなるように飾り立てたりする。飾ることを通じて信者は神への思いを実感し、またその篤い信仰を神やほかの人びとに示す。

見かわす

人びとは思い思いに飾り立てたり、願いを込めて視線を交わせたりして神像に積極的に働きかける。
神がみとの交流において視覚は非常に重要とされてきた。ダルシャンは、神像の目を見つめて像に宿る神と視線を交わすことを意味する。神と信者は目を見かわすことで相互に交流できる。

対話する

神と人は憑依や演舞などを通じて密接に交流。
人に憑依した神は信者とじかに対話する。
神がみはさまざまなモノに宿るだけではなく、人に憑依し、信者たちと直接対話する。

演じる

人が神を演じ、それを見ることで神をより身近に感じられる。
生身の身体を介した神と交感のあり方
神と直に交感したいという心性が、仮面舞踊や幼女を生き神として祀る「クマリ信仰」をうみだした。

くらしの中の神がみ

日用品や商品に現れる神がみのすがた
神がみはカレンダーやステッカー、コミックや絵本、マッチラベル、葉書や切手、カードゲーム類、広告や商標などの日用品や商品のなかにも多数すがたを現す。

ヒンドゥー教の世界では聖と俗の空間は分けへだてがなく、神がみはくらしの中に根づいている。

飾る
神像用ターバン

【神像用ターバン】

飾り(衣・花)

ヒンドゥー教の聖典などに説かれるように、衣や花を捧げるという行為は、人が神との関係を結び、祝福にあずかる重要な宗教行為のひとつ。

神像の版画は、布やビーズなどで装飾する例もよくみられる。

サラスヴァティー女神の版画(布やビーズで装飾されている)

【サラスヴァティ女神】

見かわす

絵画やポスターを見つめる信者に対し、神がみみずからの意志でこちらを向いて語りかけてきそうな構図は人気が高い。

クリシュナとラーダー

【クリシュナとラーダー】

第4章 ときの巡り

年間を通じておこなわれる祭礼をとおして神と人が交感するすがた。

シータラー・サプタミー
ガンゴール

雨季の祭礼

サーワン月
ジャナム・アシュタミー

秋の祭礼

ナヴァラートリ
ダシェーラー

秋の実りを祝う

ディワーリー

寒季の祭礼

サラスヴァティ・プージャー
マハ―・シヴァ・ラートリ
ホーリー

秋の祭礼
ダシェーラー
ラーマが弟ラクシュマナや猿軍の将軍ハヌマーンと協力し、魔王ラーヴァナを討った日を記念して挙行される祭礼。
秋の実りを祝う
ディワーリー
光の祭礼の別名があるように、家々の門口には灯明がともされ、ラクシュミー女神をお迎えする。

こちら章でシータラー女神(天然痘そのものの女神)、クリシュナ、ガンゴール、イサ、ラーダー、ヴィシュヌの一切相、ガネーシャ、ラクシュミー女神、サラスヴァティ女神、パールヴァティー女神の展示がありました。

そして映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』でも主人公が信仰する“ハヌマーン”の展示があり、自らの胸を開いて忠誠をみせているすがたが描かれていました。

グッズ売り場では“ヒンドゥーの神様相関図”のクリアファイルをみつけました!これは大事、必需品です。“図録”は、コラムも書籍かのようにしっかりまとめられているのでガッツリと楽しめそうです。

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