お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】
観音霊場と祈りの美

特別展「西国三十三所 観音霊場と祈りの美」レポート【奈良国立博物館】

西国三十三所
観音霊場と祈りの美

平成20年8月1日(金)~9月28日(日)
奈良国立博物館

観音霊場と祈りの美

奈良国立博物館の特別展「西国三十三所 観音霊場の祈りと美」に行って来ました。

展示期間が、前期・後期と、1・2・3期に分けられている展示品があります。
観覧出来た日は、後期で2期にあたりました。

西国三十三所は、奈良時代に奈良・長谷寺を開いた“徳道上人”によってはじめられたとされ、その後、“花山法王”の中興を経て広がったと伝えられています。“観音菩薩”が三十三通りの姿を現し人々を救済するという「三十三身」に由来すると考えられ、三十三の霊場それぞれの本尊もすべて観音菩薩です。

花山法王1000年御忌の年を記念し、各札所にて順次開催される本尊開帳に合わせ、西国三十三所各札所に伝来された名宝 仏像・仏画・縁起絵巻・曼荼羅・工芸品等の展示となります。奈良会場:190件(国宝10件、重要文化財60件)

観音霊場と祈りの美

展示で印象深く感じた感想を書いてみたいと思います。

第1章 ほとけ―観音の道

岡寺・菩薩半跏像

胴造・鍍金の16,5cmという小さい観音像です。岡寺本尊如意輪観音坐像の胎内に納められていたという半跏思惟像です。右手の指先がそっと頬に添え左足を下におろした上に、右足を組んでいる姿と微笑むかのような穏やかな優しい表情で瞑想をしているかのようなお顔の観音さまに大変惹かれるものを感じました。

清水寺・千手観音坐像(奥院安置)

木造 玉眼 金泥 截金
特別展の写真の看板・チラシ等で使われている観音像です。
清水寺奥院の本尊で、厨子に長く秘仏として奉られ2003年に243年ぶりに寺内で開帳されました。寺外での公開は、この特別展が初めてとなります。

仏師の高い技量と、造形的にも安定した美しさが“快慶”に非常に近い作風だということですが、銘文が確認されておらず作者の特定は難しいのだそうです。

この観音様に近づき、しっかりと目の中にお姿が入ってきた途端、決して大袈裟ではなく気高さと気品と美しさに鳥肌が立ちました。それほど、実物は素晴らしかったです。思わずチラシと見比べたほどです。

真正面だけではなく右横からも左横からも見せて頂けるような展示になっているので、お顔の左の忿怒面、右の菩薩面もしっかり見る事が出来ました。目じりの切れ上がった端正な目鼻立ちと銅製の垂髪や瓔珞が、大変華やかで美しい観音様でした。

観音霊場と祈りの美

中山寺・救世観音立像

「ぐぜかんのんりゅうぞう」と読むそうです。
胴造の13,9cmという小さい観音像です。胸前で宝珠を、右手が上で左手が下で持っています。法隆寺夢殿本尊・救世観音像などと同じ形式です。光背と台座が金色で、観音様の光のようで神秘的に清らかで輝いて見えます。

圓教寺・如意輪観音坐像

木造 彩色
像の大部分と岩座までを桜の一材の像です。彩色されず赤く染められているそうですが、全体がいい感じの色となっていて持ち物の金色と、衣の截金文様が映えています。岩座の垂れた様な布とその下の台座の形がなんともいい味が出ているように思いました。

松尾寺・如意輪観音像

絹本着色の掛け軸です。
説明に、「はっきりとした口髭をたくわえた力強く男性的な面貌」とある通りの観音様でした。口元が少し笑っているようであり話す人の声にやさしくゆったりと耳を傾けるかのような表情にこちらも頬が緩みました。

第2章 縁起―霊場のなりたちと信仰

圓教寺・性空上人坐像(開山堂安置)

木造 古色の袈裟の中に手を入れ座っておられる像です。
「西国三十三所展」に出品されたのを機に奈良国立博物館にて今年8月4日にX線撮影を実施された結果、頭部の瑠璃壺の中に骨が入っているのが見つかりました。これは、「性空上人伝記遺続集」によると性空の没後間もなく造られた肖像は焼失した際、遺骨の入った瑠璃壺が見つかり、仏師・慶快によって像が再興され、瑠璃壺が再び納められた」と伝わる事と一致します。肖像彫刻から本人の遺骨が科学的調査で確認された事例としては、最古になるそうです。像が展示されている横に、新しくX線撮影された写真や説明が掲示されていました。
確かに壺の中に映っているのを確認しました。

総持寺・総持寺縁起絵巻

海北友雪筆の紙本著色の総持寺の縁起の巻物です。
縁起の話の内容がとても興味深く思いました。

父高房が中国にて霊木を購入するが輸出を禁じられ霊木は海中へ投じられました。成長した山陰が漂着した霊木を発見し都に持ち帰るところ摂津で霊木が動かなくなりここに寺を立てる事にしました。童子を仏師に選び、霊木で長谷観音を彫らせました。その童子の仏師は、長谷観音の化身だったといいます。

第3章 秘宝―霊場に寄せられた祈り

南法華寺・両界曼荼羅

紺地に染めた絹地に、金銀泥を部分により使い分けて描かれた両界曼荼羅です。大変繊細な線により描かれていました。

三室戸寺・釈迦如来立像

お釈迦様で玉眼入りですが、お仏像というよりも説法などで町を今歩いていらっしゃる途中の姿かのように感じました。調べてみると、摸刻の範となった釈迦像は「釈迦が説法のために生母摩耶夫人のいる忉利天に向かった時釈迦不在を嘆いた優塡王が、牛頭栴檀の香木を用いて5尺の釈迦像を作った」とされる仏像起源伝説を伴います。
調べて知った仏像起源伝説にも感激しました。

醍醐寺・金剛夜叉明王像

絹本著色の掛け軸です。
一目見ただけでも迫ってくるような迫力を感じました。

華厳寺・毘沙門天立像

木造で彩色(古色)です。
細かい彫りではないのですが
硬い甲冑、皮膚の柔らかさ、
布地のひだの表現がされています。
彫りが今まで見たことのない特徴的なように思い、
不思議なところに惹かれるお仏像でした。

第4章 法華経―観音の教えと救い

第5章 霊験像―伝えられる利益とかたち

第6章 浄土―観音の居ます場所

善峯寺・千手観音二十八部衆像

絹本著色の掛け軸です。
金色の千手観音の神々しい輝きが眼を惹きました。

観音正寺・千手観音像

絹本著色の掛け軸です。
千手観音菩薩像の向かって左に“功徳天”、右に“婆数仙”。彩色が明るめで、特に千手観音菩薩像の持ち物の華やかさが眼を惹きました。

奈良国立博物館・水月観音像(天庵妙受賛)

水面に映る月の影をみつめる“水月観音”が水墨画で描かれ“天庵妙受”の賛が墨書されている掛け軸です。柔和なお顔の観音さまのお顔と、時を経てきている水墨画の色合いがとてもいい感じの観音像だと思いました。

東大寺・華厳海会善知識曼荼羅

絹本著色の掛け軸です。
上部に大きく“毘盧遮那如来”、“善財童子”が“文殊菩薩”の指南で各地の善智識に会うため五十五の場所を順に訪ね、最後に“普賢菩薩”のもとに到り菩薩道を極めたことが描かれています。

線により区割りされた中に、指導者(善智識)と善財童子が描かれています。各指導者の姿を見るのも楽しいですが、各場所で善財童子が跪いていたり、平伏していたり、驚いていたり、見上げていたり、お願いしたり、考えていたり、聞き入っていたりしている様子のようで可愛らしく楽しく見せて頂きました。第二十八の“観自在菩薩(観音菩薩)”が如意輪観音のようなお姿で描かれています。

第7章 巡礼―人々を誘う力

青岸渡寺・西国三十三所巡礼御背板

サンドサンと呼ばれる三十三度行者が身分の証しとして背負っていたオセタ(御背板)です。熊野三所権現を表す阿弥陀如来・薬師如来・如意輪観音と、西国三十三所本尊の模刻像を納めた厨子が3個で背負えるようになっているものです。行者が巡礼途中に泊めて貰う際に像を開帳したり、故人の遺品を預かって代参供養をするなどしていました。その説明を御背板の前で読み、どちらにとっても有難い事だったのだと感じました。

石山寺・西国三十三所巡礼納札

室町時代の木製の納札です。
大きさが、縦約46,9cmで横13,2cm。しっかりした表札のようで、大きかったです。巡礼でこの納札を持って歩くには、さぞ重かったのではないかと思ってしまいました。

名古屋市博物館・新鐫西国三十三番順礼札所観世音御詠歌風景道法附

縦10,3cmで横15,5cmの紙に、岡田春燈斎画の各札所の境内風景や本尊の図、御詠歌と次の巡礼地への里数が描かれています。

とても小さな紙1枚なので字もとても小さいです。展示は、ショーケースの中ですが虫眼鏡を通しても見る事が出来るようにされていました。

音声ガイドを返却し、歩いていくと「写真と仏画で巡る 西国三十三所展」が行われていました。
こちらの感想は、別の日に・・・。

お土産は、岡寺・菩薩半跏像と松尾寺・普賢延命像のポストカードにしました。

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