お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

『京(みやこ)に生きる文化 茶の湯』レポート【京都国立博物館】

特別展
「京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」
2022年10月8日(土)~12月4日(日)
京都国立博物館

「遠浦帰帆図」「青磁茶碗」「観楓図屏風」

京都ゆかりの茶の湯の名品が勢ぞろい

茶の湯の原形は、平安時代末頃に中国からもたらされました。鎌倉、南北朝、室町と時代が進むなかで徐々に和様化し、いまや日本文化を象徴するものとして世界で認知されています。現在でも、茶道の家元や茶家の多くが京都を本拠とするように、京都は茶の湯の歴史のなかで、中心的な役割を果たしてきました。本展では、各時代の名品を通して、京都を中心とした茶の湯文化を紹介します。

茶の湯 音声ガイド
【音声ガイド】

ナビゲーター:多部未華子
解説ナレーター:三木眞一郎

序章
茶の湯へのいざない

京都という地は、「茶の湯」という日本独自の文化が生み出されるまでの歴史のなかで、中心的な役割を果たしてきました。現在、私たちが親しんでいる茶の湯が、どのように根付き、時代とともに変化していったか、伝世の名品で辿ります。
国宝「虚堂智愚墨蹟 法語」(破れ虚堂)
中国・南宋時代 是定4年(1263)
東京国立博物館
禅の精神を語った名僧・虚堂智愚の法語
国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」
朝鮮半島・朝鮮時代 16世紀
京都・孤篷庵
松平不昧が「天下の三井戸」と称した一碗

「唐物文琳茶入 酸文琳」
中国・南宋一元時代 13-14世紀
徳川家康が所持し、後に酒井忠世が拝領、姫路酒井家で伝えられてきた大名物の茶入

重要文化財「佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則」
(詞)伝 後京極良経筆
(絵)伝 藤原信実筆
鎌倉時代 13世紀

中国から日本にお茶が伝わりました。
お茶の粉をお湯で溶いて飲むようになります。

第1章
喫茶文化との出会い

喫茶文化は、奈良時代に中国から日本へと持ち込まれました。平安時代後期、現在の茶の湯につながる中国・宋代の点茶法による飲茶が始まったことにより喫茶文化が大きな変化を遂げる様子と、その広がりを紹介。
「茶経」
中国・明時代 
嘉靖21年(1542)刊

重要文化財「五百羅漢図」

周季常・林庭珪筆
中国・南宋時代
京都・大徳寺
羅漢会、阿弥陀画像供養、飯僧、喫茶準備
観音画像礼拝、浴室、乗輿、喫茶

「喫茶養生記」 断簡 
南北朝時代 14世紀
京都・建仁寺 
建仁寺開山の“栄西禅師”が喫茶の風習を日本に伝えた書
将軍がお酒の飲むすぎで苦しんでいた時に、お茶と一緒にこの本を差し上げた。
重要文化財「慕帰絵 巻第五」
(詞書)六条有光筆
(絵)藤原隆章
南北朝時代 観応2年(1351)
京都・西本願寺
重要文化財「祇園社家記録」
南北朝時代
京都・八坂神社

四頭茶礼

「四頭茶礼道具」
江戸時代
京都・建仁寺
禅宗とともに中国からもたらされた「四頭茶礼」の道具
「明庵栄西像 絶海中津賛」
南北朝-室町時代
京都・両足院
重要文化財「龍虎図 伝牧谿筆」
中国・南宋時代
京都・大徳寺
重要文化財「三具足」
中国・明時代
奈良・唐招提寺
仏教の教えのひとつ「禅」を学ぶために、中国に行ったお坊さんたちが、抹茶を飲む習慣や道具を日本に持ち帰りました。

第2章
唐物賞玩と会所の茶

禅宗寺院における規範としての茶が続けられる一方で、武家の会所では唐物を賞玩するなかで茶を楽しむ文化が生まれます。また、茶の栽培の広がりに伴ない、社寺の門前の茶屋などで広く茶が楽しまれるようになる様子を紹介。

重要文化財「遠浦帰帆図」伝牧谿筆
中国・南宋時代
京都国立博物館
織田信長が手にしていたと伝わる中国・南宋時代の禅僧の手による水墨画

重要文化財「青磁茶碗 銘 馬蝗絆」
中国・南宋時代
東京国立博物館
平家物語に逸話が残る青磁の名品
重要文化財「茉莉花図」
伝趙昌筆/常盤山文庫
中国・南宋時代
足利将軍家旧蔵の名品
国宝「煙寺晩鐘図 伝牧谿筆」
中国・南宋時代
東京・畠山記念館
「君台観左右帳記」
室町時代
東北大学付属図書館
重要文化財「曜変天目」
中国・南宋時代
滋賀・MIHO MUSEUM
国宝「曜変天目」
中国・南宋時代
京都・龍光院
400年、禅の心を伝えてきた名碗
武士たちは、中国から入って来る道具、「唐物」を集めて茶の湯を楽しみました。このころ、人が集まる場所にお茶を出すお店ができて、まちの人たちもお茶を楽しむようになりました。

第3章
わび茶の誕生と町衆文化

唐物道具がもてはやされるなか、日々の暮らしのなかにある道具を用いた、わびの精神を取り入れた茶が生み出されます。わび茶が生み出され、発展する過程は、多くの町衆の経済活動に支えられていました。
国宝「観楓図屛風」
狩野秀頼筆
室町-桃山時代
東京国立博物館
秋の京都洛北の高雄で茶を楽しむ人々の姿
「珍皇寺参詣曼荼羅図」
桃山時代
六道珍皇寺
「心の一紙 鴻池道億写」
江戸時代
京都・今日庵文庫
灰被天目 銘 夕陽
中国・元-明時代
密教法具・寺院仏具・仏像販売【稲田法輪堂】

香合 木製彩色「蓮蕾」 緑 蓮華の蕾が膨らみ、色づいた形の木製の香合です。 岩絵の具・金粉による彩色仕上げをされておりま…

第4章
わび茶の発展と天下人

千利休がめざしたわび茶は、信長、秀吉をはじめとした天下人も魅了し、武将たちは、こぞって茶道具の収集を行いました。それは茶の湯が日本全国に広がりながら、独自の道具が生み出され、大きく形作られていくことにも関係していきます。

重要文化財「大井戸茶碗 銘筒井筒」
朝鮮半島・朝鮮時代 16世紀
秀吉愛用とされる天下の名椀

重要文化財「黒楽茶碗 銘ムキ栗」
長次郎作/文化庁
利休の創意により生み出された黒茶碗

重要文化財「豊臣秀吉像」
玄霊三等賛
桃山時代
滋賀・西教寺
秀吉の三回忌に製作された肖像画

重要文化財「千利休像」
伝長谷川等伯筆/古渓宗陳賛
桃山時代
正木美術館
利休の存命中に描かれた唯一の肖像画

国宝「志野茶碗 銘 卯花墻」
桃山時代
東京・三井記念美術館
真台子・釜・風炉・唐銅皆具
(真台子)盛阿弥作
(釜・風炉)与次郎作
桃山時代
京都・不審庵
堺の商人の家に生まれた千利休は、暮らしの中にある身近な道具を使ってお茶を楽しむ「わび茶」を広めます。

第5章
茶の湯の広まり 大名、公家、僧侶、町人

利休や秀吉が活躍したのち、武家、公家、僧侶、町人とそれぞれの立場において、茶の湯が広かっていきました。それぞれの茶の湯の形成過程や独自の茶道具などを紹介。

「黒織部菊文茶碗」
桃山時代
「へうげもの」の茶碗

重要文化財「色絵若松図茶壷」
野々村仁清作
江戸時代
文化庁
野々村仁清の手による華やかな茶壷
「古田織部書状(正月廿七日付 織田有楽斎宛)」
桃山時代
奈良・大和文華館
「唐物文琳茶入 奈良文琳」
中国・南宋-元時代
東京・出光美術館
国宝「青磁鳳凰耳花入 銘 万聲」
中国・南宋時代
大阪・和泉市久保惣記念美術館
重要文化財「青磁鳳凰耳花入 銘千聲」
中国・南宋時代
京都・陽明文庫
茶の湯はさらに広がって、いろいろな立場の人が、それぞれの茶の湯を楽しむようになります。

第6章
多様化する喫茶文化 煎茶と製茶

江戸時代、中国との交流がなされるなか、煎茶がもたらされました。また江戸時代中期、京都府南部の宇治地域における製茶技術の向上によって、より良質な茶が作られるようになった様子などを紹介。
「紫泥茶 宜興窯」
中国・明時代
京都・萬福寺
萬福寺開山・隠元禅師愛用の茶器
「宇治製茶図巻 海北友泉筆」
江戸時代
京都・今日庵文庫

第7章
近代の茶の湯 数奇者の茶と教育

文明開化の名のもとに日本の伝統文化は大きな影響を受けました。茶の湯も例外ではなく、多くの茶道具が海外に流出しました。このような時代背景のなか、近代数寄者たちの間では茶の湯が流行、学校教育にも茶の湯が導入されました。
重要文化財「色絵鱗波文茶碗」
野々村仁清作
江戸時代
京都・北村美術館
江戸から現代、時代を超えて愛された茶碗
「茶道の源意 玄々斎筆」
明治時代
京都・今日庵
「黒漆塗点茶盤・喫架・円椅 玄々斎好」
明治時代
京都・今日庵
「北野天満宮献茶道具」
京都・北野天満宮

喫茶の風習が中国から伝わり、日本で時代とともに変化していったお茶の歴史。茶経があったり、法語の軸があったり、羅漢さんの喫茶のようすがあったり、行事でお茶を振る舞われている様子だったり。

1つの展示室で建仁寺方丈 四頭茶礼が再現されてあり、その場を体験しているようで胸あつくなりました。

思いもよらなかったのは、第1章で師の法話でのお茶のエピソードを思い出したこと。お茶といえど学ぶことの広さ・深さを感じたのでした。

栂尾(まきのお)のお茶、宇治のお茶。歴史の流れから見るお茶は、また面白く納得で、展示されている年表で確認をし直すことがこんなに楽しいと思ったのは初めてかもしれません。それだけ日本の歴史とともにお茶の歴史があった。「喫茶深し」と思いました。

京都国立博物館

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