お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

『若冲ワンダーランド』展 レポート【MIHO MUSEUM】

『若冲ワンダーランド』
開催日時 : 2009年9月1日(火)~12月13日(日)
MIHO MUSEUM

江戸時代の中期、絵画は史上まれに見る興隆の時期を迎えます。
京都では、享保元年 尾形光琳が亡くなり、
奇しくもこの年は伊藤若冲の生年に当たり、
町人出身画家の新旧交代を象徴するかのようです。

当時、写生の絵が流行し、伊藤若冲もまた花や鳥、動物を熱心に写生をしました。
独自の画風を確立し、細密な写生画や奔放な水墨画を数多く描きました。

「象と鯨図屏風」を中心に、若冲の作品から、
ワンダーランドの呼び名にふさわしい傑作を選りすぐって展示。
同時に、池大雅、与謝蕪村、曾我蕭白、円山応挙ら同時代の、
個性的でかつスケールの大きな「ワンダーランドの共住者たち」にも照明を当てます。

伊藤 若冲(1716-1800)

若冲ワンダーランド

MIHO MUSEUMに到着。

レセプション棟でチケットを購入して、
電気自動車で美術館棟に行きます。
歩いても行くことが出来ます。

若冲ワンダーランド

深い緑に包まれ、なだらかな坂道を登り、
トンネルと橋を渡ってはじめてその姿を表す
MIHO MUSEUMは設計者I.M.ペイ氏の桃源郷への思いが深く込められています。

若冲ワンダーランド

双鶏図

展示は、「双鶏図」より始まりました。
若冲は、青物問屋を40歳の時に隠居し、
家で鳥を放し写生をしていたそうです。

と聞くと絵ばかりであったかのように思われますが、

向かい側のガラスケースの中に展示の
「京都錦小路青物市場記録」
奉行所より営業差し止めを命じられた錦市場の危機に
奮闘する若冲の姿がに記されています。

「鸚鵡図」では、
絹本著色の掛け軸で、白い透けるような鸚鵡が
鮮やかな赤で装飾が豪華な止まり木に止まっています。
白い鳥のふわふわした一枚一枚の羽毛の美しさが際立っていました。

鳥の透けるような美しさとは逆に

「花鳥版画」では、
雄鳥の色鮮やかさがしっかりした美しい色で表現されていました。

寒山拾得図

水墨画の「寒山拾得図」では、
右幅では後姿の人物で、
左幅では笑顔いっぱいの表情の人物が描かれていました。
画面いっぱいの後姿と、笑顔にとても惹きつけられ
今も印象深く残っています。

月夜白梅図

「月夜白梅図」は、
とても暗い展示室で
月にスポットライトが当てられている演出がされていました。
月に輝く満開の梅の花がとても幻想的に輝いていました。
演出なく普通の日の光でも観てもどのように輝いて観えるのかも
観てみたいような気がします。

出山釈迦図

29歳で出家した釈迦が山にこもって6年の断食ときぎょうをしたが、
苦行からは解脱を得られないと悟り、山から降りてきた場面です。
黒白の掛け軸と、彩色された掛け軸が左右に展示されていました。
炭の濃淡の表現は若冲のみつけだした表現で描かれているそうです。

伏見人形図

7体の布袋さんが描かれた掛け軸です。
本当は布袋さんではなく、布袋人形なのだそうです。
伏見人形は、伏見稲荷付近で
稲荷山の埴土を用いて作られる彩色された人形です。
調べてみると伏見人形には馬やおたふくや狐など
形はいろいろあるようですが、
若冲は7体の布袋人形を描いたことが多かったようです。
それは、京都には家内安全と無病息災のため
7年間毎年1体ずつ買い求める風習と関連があるとされています。
顔の形と眼の表情、そしてオレンジ系の色のポイントが利いていて
温かく愛らしい印象を受けました。

売茶翁像

肩に竿を乗せ、前後にお茶の壷をさげたあごひげを伸ばした
男性の表情が丁寧に描かれているのが印象に残るのと共に、
上に入れられた賛の字体が四角く特徴があり、
空間のバランスがとれていていい味が出ていました。

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蒲庵浄英像

黄檗山萬福寺第二十三世住持の蒲庵浄英の肖像画です。
額・・眼の周り・口の周りの皺とぼかしで描き込まれ、
一目見た瞬間にお顔に惹きつけられました。
観ている目を下にやると、下にいく程描かれた筆の太さが太くなり
お顔との描き方の違いがはっきりと判るにもかかわらず
一人の肖像画として違和感を感じません。
そして観る目を上にやると、ご本人蒲庵浄英の賛が立派な字で入れられています。

今回の若冲の絵を観せて頂いて、絵に賛を入れられた
賛がとても活き活きした字に見えたのが印象深く残っています。
というのは、絵と文字がお互いを高めあって
息吹を感じさせる作品となっていたように思えます。

象之絵巻物

象が、ベトナムから長崎に到着し、江戸に向かう途中
京都の法皇・天皇に謁見した5場面です。
象をつないだ縄を引っ張る人や、畑作業しながら眺める人々。
最後の場面、法皇・天皇と思われる人が高く上がった場所より
地面で伏せている象を眺め、
象を連れてきた人は法皇・天皇に説明するかのように象を指差している姿。
説明がなくとも、珍しい光景で戸惑いながらも初めての象との出会いをしている姿が
面白おかしく伝わってきました。
細い筆のラインと淡い彩色での色づけが上品でした。

若冲ワンダーランド

象と鯨図屏風

右に鼻を高く長く伸ばし、牙も大変長く上に伸びている白象。
これだけだと強い印象ですが、目が逆さの三日月型で垂れており
耳もキャラクターの鼠のように丸く可愛く、
身体も丸く小さく座っているユーモラスさを感じる象です。
背中に牡丹の花が垂れてきているのも花飾りのようで可愛らしさを感じます。
左には、勢いよく潮を噴き出している黒い背中の身が見えている鯨。
象と鯨が出合い、友好な挨拶をしているようです。
この屏風は、若冲が80歳の時の作品だとか。
とても80歳の時の作品とは思えない、
これから明るい未来に益々新しいものを描いていくという
希望というか絵の溌剌とした勢いと力強さを感じる作品でした。

若冲は創造力が豊かな表現といわれていますが、
まさに眼で見たままではなくイメージの表現が豊かだと思いました。
この「象と鯨図屏風」の部屋では、とても明るい気分になりました。
この展示室全体に、活気のある明るい空気が流れているように思いました。

石峰寺図

展示の最後を締めくくるのは、
晩年若冲が絵が売れると、石屋さんに自分のデザインした
羅漢像を彫ってもらい石峰寺に並べていたという
「石峰寺図」です。

若冲ワンダーランド

観覧したのが、第1期(9/1~9/27)でした。
「枯木鷲猿図」「猿猴摘桃図」「百犬図」
まだまだ魅力満載の展示があるようです。

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