お寺・神社・博物館・美術館にて【法輪堂の拝観日記】

『ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画』展 レポート【京都市美術館】

『ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画』

開催日時 : 2009年6月30日~9月27日
開催場所 : 京都市 京都市美術館

ルーヴル美術館が誇る17世紀絵画の傑作の数々が展示されます。
出品される71点のうち、およそ60点が日本初公開。
さらに30点あまりは初めてルーヴル美術館を出る名品です。

17世紀は、
オランダ、スペイン、フランスなどの美術史を通じて
「黄金の世紀」と呼ばれておりレンブラント、ベラスケス、
フェルメール、ルーベンス、プッサン、ラ・トゥールといった
画家を数多く輩出しました。

裕福な市民階級が台頭し、聖人信仰もかつてなく高まりました。

当時のヨーロッパの姿を「歴史」の視点から浮かび上がらせようとする試みです。

〔レースを編む女〕 ヨハネス・フェルメール
〔川から救われるモーセ〕  ニコラ・プッサン
〔バテシバ〕  ウィレム・ドロスト
〔アンドロメダを救うベルセウス〕  ヨアヒム・ウテワール
〔王女マルガリータの肖像〕  ディエゴ・ぺラスケスとその工房
〔リュートを持つ道化師〕 フランス・ハルス
〔ユノに欺かれるイクシオン〕  ペーテル・パウル・ルーベンス
〔縁なし帽を被り、金の鎖をつけた自画像〕  レンブラント・ファン・レイン
〔農民の家族〕  ル・ナン兄弟
〔エスランの聖母〕  シモン・ヴェーエ
〔大工ヨセフ〕  ジェルジュ・ド・ラ・トゥール
〔クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス〕  クロード・ロラン
〔6人の人物の前に現れる無原罪の聖母〕  パルトロメ・エステバン・ムリーリョ

Ⅰ.「黄金の世紀」とその影の領域

プロローグ
絶対主義のヨーロッパと共和国的規範
ジャンルを超えて―良き趣味の教え
戦争、悲惨、日常生活

ルーヴル美術館展は、
〔川から救われるモーセ〕  ニコラ・プッサンから始まります。

〔川から救われるモーセ〕  ニコラ・プッサン

大阪で開催中の「ルーブル美術館展 美の宮殿の子どもたち」では
コブラン製作所の「川から救われるモーセ」で女性二人により川から
抱きあげられていましたが、こちらの絵ではファラオの娘である女性が
指をさして指示している様子で高貴な威厳のある姿で描かれていました。
川から救いあげたのは男性で、女性が今まさに抱き上げようとしています。
モーセは手を差し上げている姿は元気そうであるように見えます。

ユダヤ教を創始した預言者モーセはエジプトで生まれました。
ファラオは、新しく生まれたヘブライ人の子を抹殺するように命じたので、
モーセの母は彼を籠に入れて隠し、ナイル川に流しました。
ファラオの娘がこれを見つけて助け上げ、宮廷で育てました。

〔レースを編む女〕 ヨハネス・フェルメール

近くで観せて頂く列と、
その後ろにゆっくりじっくり観ることができる列に並んで観ます。

24×21という小さいサイズに独特な額縁に飾られていました。

フェルメールの世界に一機に引き込まれ、実物はすごかったです。
他の作品とは全くタッチが異なり、近くでよく観ると
ラインの区切りは淡く明確ではなく、色の濃淡で表されているような感じでした。

そんなに繊細に丁寧に描かれているのに、
裁縫箱からはみ出している赤糸
描かれているというより絵具が跳ねているようになっています。
綺麗なだけでないのも、また魅力なのかもしれません。

Ⅱ. 旅行と「科学革命」

旅行と知の進展
魔法、神話、伝統的信仰

〔クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス〕  クロード・ロラン

宮殿の柱のように見える建物が立ち並ぶ港に船が入ってくる向こう側が
輝く黄金色に輝いており、港に居る人たちもその黄金色に照らされています。
何とも言えない希望のような黄金色が素晴らしい絵でした。

〔王女マルガリータの肖像〕  ディエゴ・ぺラスケスとその工房

よく見る絵ですが、
実物の大きさは70×58で思っていたよりも小さい
大きさの肖像画で立派な額縁に飾られていました。
金髪の美しさは素晴らしかったですが、
それよりも目の輝きが大変美しく潤んでいたのが印象的でした。

〔弓を持つ東方の戦士(バルバリア海賊)〕 ピエル・フランチェスコ・モーラ

大地の上でを持つ立派な男性が描かれています。
172×123という大きさに大きく描かれており、
同じ大地に立っているか、
または映画の中に入り込んだかのような錯覚を覚えるほど
迫力ある絵でした。

〔メランコリー〕 ドメニコ・フェッティ

空が見える開放的な区切られた一角で地球儀砂時計辞書などがあり
机の上の髑髏を抱え肘をついた手を額にあてて思い悩んでいる女性が描かれています。
自分の思いに浸り考える姿から目が離せなくなりそうでした。

〔ユノに欺かれるイクシオン〕  ペーテル・パウル・ルーベンス

筋肉・柔らかい肌感の表現が大変素晴らしい作品でした。

〔歯を抜く男〕  ヘリット・ダウ

椅子に腰かける男性が、今まさに歯を抜かれようとしている絵です。
「何故、歯を抜かれる瞬間の絵なのか。」と不気味さを感じました。

調べてみると、描かれた医者毛皮の袖が付いた服を着ており、
患者のそばには卵の籠麦わら帽子が置かれているところから農民だと考えられます。

ありそうにない出会いであることから、
ダウはあらゆる領域における詐欺師非難しているのだそうです。

Ⅲ. 「聖人の世紀」、古代の継承者?

親しまれた聖なる物語
キリスト教の世紀に受け継がれた古代
エピローグ

〔聖母の誕生〕  ピエトロ・ダ・コルトーナ

左奥でマリアの母アンナが横になっており、
真ん中の赤いドレス姿の女性に抱かれた赤ちゃん 聖母マリア。
母アンナにも、聖母マリアにもそれぞれ女性が二人が囲んでいる様子が
望まれ愛された環境で誕生されたように思えました。
よく観ると、星が5つ赤ちゃんの聖母の頭を取り巻いています。

心からの幸福感を味わっているかのような
穏やかな優しい表情の〔受胎告知 天使〕  カルロ・ドルチ
信仰深く心より慕っているような
感動の表情と指を組んだ姿の〔受胎告知 聖母〕  カルロ・ドルチ
左右に展示されており、
受胎告知というのは、キリスト教のカトリックの話です。
この意味で、バロック時代の産物です。

〔大工ヨセフ〕  ジェルジュ・ド・ラ・トゥール

大工仕事をする父ヨセフの前でロウソクの灯りで手元を照らす少年キリスト。
実際の絵では、全体が暗い中でヨセフの額に明かりで照らされ
目がキラッと輝き怖い表情に感じました。
キリストの口元は何かをヨセフに無邪気に語りかけているかのようです。
しかし、ヨセフの様子からは硬い空気が流れていました。

〔花輪に囲まれた聖家族〕  フランス・フランケン(子)

とても華やかな花輪の中に聖家族の絵。
それで絵の前を離れようとしたのですが、
花輪の上に神、下には骸骨がとても鋭い細い線で白っぽく描かれています。
善と悪との対立を示されているようでした。
仏教での地獄絵はよく目にするものの、
キリスト教でこういう対比を観たのはあまりなかったので珍しいと思いました。
最初に、花輪の華やかさだけに目を奪われて終わろうとしたのが
バツが悪いような感じでした。

『6人の人物の前に現われる無原罪の聖母』 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ

いよいよ目的の『バルトロメ・エステバン・ムリーリョ の
6人の人物の前に現われる無原罪の聖母』
です。

右側の天使が思っていたよりも大きく
聖母マリアの表情が大変穏やかな優しい表情であったのが
実物の絵でないと味わえないことでした。

天使の文字を書かれたリボンは
「最初より神は聖母を愛された」
ラテン語で書かれているのだそうです。

〔バテシバ〕  ウィレム・ドロスト

暗い中で照らし出された洋服のはだけた姿の〔バテシバ〕  ウィレム・ドロスト
大変美しい女性から、魅力があふれ出ていて
観る人がなかなかその場を離れられないような魅力を感じました。

〔4人の福音書記者〕 ヤーコプ・ヨルダーンス

開いた本の文字を4人で一緒に読み合わせている〔4人の福音書記者〕
ヤーコプ・ヨルダーンス

なんとか読み説き得ようとする真剣な顔に、皺が深く刻まれています。

そのから、教えの深さであったり、
年齢関係なく、なお知ろうとする姿から感じられました。

〔ペテロの涙〕 グェルチーノ

ルーヴル美術館展の最後の展示は、
〔ペテロの涙〕 グェルチーノ

画面左側にイエスの死に耐える聖母
右側に、イエスの弟子であることを言い逃れ悔い哀しみ
白い布で涙を拭いている聖ペテロ

暗い中でスポットライトが当たるように
くっきりと二人が浮き出て見えます。

最初に聖ペテロに目がいきますが、
その横の聖母の眼差し、瞼の色、鼻先の色、
何とも言えない聖母の顔の表情から
目が離せなくなります。

受難にまつわるエピソードと十字架に架けられるキリストを
〔キリストの受難〕 フランス・フランケン(子)でじっくり観た後なだけに
聖母の眼差しの先に浮かぶ様々な情景が伝わってくるようです。

観覧の混雑具合などにもよると思いますが
ゆっくり観て回っても内容の濃い名作ぞろいのせいか
気がつけばもう最後の作品の前という感じの展示の数々でした。

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