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職人の現場から > 法具職人 > 京都密教法具製作所訪問記

京都 密教法具
京都・密教法具製作工房見学 




京都の密教法具製作工房所を見学させて頂いてきました。
こちらは、常に最高級の法具を製作している工房です。
全国の多くの有名寺院の法具もここから生み出されています。

※諸般の事情により、画像は掲載することが出来なくなりました。
文字のみですが、迫力のレポートをご覧下さい。

大まかに作業工程順に見ていきます。

ここからは大変貴重な作業現場です。



(かたちづくり)

まず、
原型を作る素材の金属を溶かすべく炉のある作業場へ行きました。
こちらでの作業は、月に1・2回しか行なわれない作業なのだそうです。
丁度見せて頂けたのは本当に幸運でした。

このレポートの初めに目に入る写真が
銅合金を溶解する炉】です。
炉が稼動しているところは、中々見れるものではありません。
今日のご縁を仏様に感謝です。

炉の温度は1300℃。
約1300度の熱で溶かされた金属は、液体になっています。
銅や錫などが混ざり合った合金で、
創り上げるものの種類によって混ぜ具合や材料は様々です。
その熱気は、言葉ではあらわせないほどの独特の熱気でした。

しかし、この作業のお仕事をされている方は
ヒ素の臭いや、熱さ、緊張感、重労働で
この作業をするだけでクタクタになって
他の事が出来ないぐらいお疲れになられるそうです。
夏は尚更ですが、逆に冬は一歩外に出ると
その温度差に体調を崩される事が多いとか。

焚き火の熱のような生易しいものではなく、 痛いぐらいの熱気で、
時たま上がる煙は、吸った後、のどがひりひりする様な臭気。
いわゆる亜鉛の煙でたくさんの量が体内に入ると
中毒になると後に教えられました。
そのため、こちらでは、この作業は、月に1、2回しか出来ないそうです。
したがって、失敗は許されず、手際よくきびきびと作業が行なわれていました。
私は、危険だということより、この貴重な現場に
居合わすことが出来た喜びで一杯であったと思います。
こういった作業を一生の仕事としてこなす職人の覚悟は相当なものだと感じました。

炉で"金物の元となる金属"が熱されて
溶かされた液体(湯と呼ばれています)が器ごと出てきました。
鋳型の中に次々と湯が流し込まれていきます。
まるで火山の溶岩流のようです。
型に流し込まれたものもまだ熱くオレンジ色に光っています。
もちろん指を突っ込んだらやけど程度ではすみません。

流し込み終わった器の中に急いで
再び"金物の元となる金属"が入れられていきます。
すると、見る見るうちに器の温度が冷えていくのが目でも分かります。

次々に作業をこなしていくのには、手際のよさが必要です。
再び炉の中に入れられ、蓋を閉められ熱っされて溶かされています。
としているうちに、型に流し込まれたものが手早く取り出されます。
流し込まれた型のブロックは2個1組でなっており、
それが3組ボルトの様なもので閉められ
横向きに並べられ、流し込まれているのでした。

ブロックの型から取り出されると固まった金属が出てきました。
その外側は砂が覆っていました。
この砂は特殊な砂で、使えるのは1・2回。
それも使う前に乾かしておかなくてはいけないようです。
そして、砂をきれいに落せば工房の場所を移して次の作業が行なわれます。



(完 成 へ)

完成に向けて細やかな作業を行なう作業場に場所を移しました。

酒水器の蓋を蓮柄に彫金している所です。
細かい金属の粉が飛び散るのを防ぐため、
透明のガラスの囲いの中に手を入れて作業されています。
マスクも吸い込まないためのものです。
このように受注したものが職人の手によって一つ一つ
先がアイスピックの様な尖った工具で筋を付けて掘り込まれていくのです。
この作業には、デザインのセンスも必要です。

そして、 日本の歴史、宗教全般知識、密教法具の歴史的背景
それぞれの法具の宗教的意味、
古来からの宗教的文様、美術技術理論etc....。
などが基本的に理解していてなおかつこちらの工房での修行などで
身に着けた実戦的技術を持たないと 仕事が出来ない世界です。
(仕事が出来るまで最低約8年の修行が必要とのこと)

そういったレベルの職人が製作する【法 具】です。

これ以外にも万力に挟んで削ったりこすったりしながら仕上げていきます。
すべて手作業で法具が創られていく。時間がいくらあっても足りないでしょう。
本当に好きでないと出来ない仕事です。
確かに密教法具は、ある意味造形的に美しいものが多く、
美術芸術的な魅力があると同時に相当な体力も必要です。
"美術的な繊細な感性、知識、知性"と
"肉体労働にも耐えられるタフさ"相反するものですが、
密教法具にたずさわる人には、両方が必要だと思います。
ということは、誰でも出来ることではありません。
ある意味選ばれた者が出来るのでしょう。
安価に販売されている法具(の様なものではないでしょうか。)とは
比べものになりません。
確かに形だけを考えれば同じような形は出来るでしょう。
違うのは、【こだわり】です。

ある程度の技術を持っている人でも宗教的な意味や
歴史的な背景なんてどうでもいい人が製作すれば、
細部のデザインや模様はどうでもいい様になるでしょう。
例えば、宗教的な意味とか歴史的な意味を知っている職人が製作すると
どうでもいい箇所は、絶対に生まれません。
それは、何らかの意味を探し見つけ、また、どうしても解明できない部分でも
持っている知識とこだわりの中から新たに見出してよい物を製作していきます。

こちらの工房の職人の方々は、その意欲的な動きを見ていても違いました。
流れ作業で機械的に作業をしている方なんて一人もいませんでした。
一人一人がその役割において プライドを持ちプロフェッシュナルであると感じました。
このように古き良い物を新しくする作業も行なっています。

加工作業の後、こうして仕上がった法具は、
磨きをかけられたり、 金や銀のメッキを施されて完成に至ります。




(良いものを創るために)

最後に社長さんより、いろいろお話を聞くことが出来ました。

良いものを創るこだわりを感じました。

金剛鈴〈注1)の原型を見せて頂きました。
最近は"音の良さ"を求められる方が多くなったそうです。
良い音は"レ"の音(
壱越の音・いちこつのおと)とされています。
そして長く伸びる音がお好きな方など様々。
そこで、音にこだわるご寺院様がご依頼の場合で
鍬彫り(すきぼり)などの上物など場合、
18個の金剛鈴の原型にそれぞれ番号が書かれています。
同じ"レ"の音でもたくさんあります。
原型を直接いくつかをご依頼のご寺院様に送るのです。
そして、そこから「お好みの音はどれか」を選んで貰うのです。
基本的には、同じ音なのですが、鳴らすと微妙に違うそうです。
普通の人には、わからないぐらいの違いです。
お好みの音に応える為の工夫と研究と技術に頭が下がります。
こういったことは、 つくるもののこだわりとして行なっているのです。


舎利容器を見せて頂きました。
本来は、お釈迦様のお舎利(お骨)を入れ、五重塔に安置納入したり、
お寺の堂内の舎利塔などの中に奉安するものです。
今回見せていただいたものは、 そうお目にかかる事の出来ない貴重なもので、
製作に膨大な時間を費やして創られているもので、 まだ完成はしていません。
どこにおさめられるかは、シークレット。
下世話な話ですが、価格などは想像も出来ない価格になるのではと感じました。
安置する以外に有名寺院などでは様々な使い方をされているそうです。

社長からその中の一つをお聞きすることができました。
真ん中の大きい丸い所をパカッと開ける事が出来き沈香など香りのする香木を
丸い玉に作ったものに 穴を開けたものを
この中に入れ膝元に抱いて瞑想される時に使うという説明をしていただきました。
そういう使い方をするのは密教系寺院です。
なるほどと聞きつつも奥の深さに感心するばかりでした。
瞑想される時、香りはどんな感じに伝わるものなのだろう?
また、その場面を想像してみると、「なんと素敵な姿だろう」と
わくわくするような感覚とともに思いをはせていました。
こんなすごいものをしかも製作途中に、
実物を見せて頂いた社長に有り難く感謝をしました。


今までの作品を手にとらせてもらい見せていただきました。
持つと分かりますが質感や重みがあります。
時代による法具の形が違うお話や合金のお話など
沢山のお話をいただきまして感動しました。

社長さんは、目に力のある方です。
「この方に手がけられた密教法具は 力強いパワーが備わっているに違いない」
と思わせる 迫力と情熱をもたれた方でした。
「作ったもの作ったものが次々出て行ってしまう中で
なかなか残していくものを作る事は出来ない
けれども 1年に1つでも残す良いものを作っていきたい。」
と穏やかな口調ではありましたが、お仕事に懸ける情熱の熱いものを感じました。

今回、快く迎えていただいたばかりではなく、
普段知りえない密教法具のお話を沢山しかも熱心に教えていただき恐縮しました。
社長さんも職人です。
自分の手から良いものを創ることを追求しつつ、
大学教授が聞きに来るぐらいの
宗教学的知識
すなおに "
凄い" と思いました。

お聞きした中で面白かった
法具の知識を少し紹介します。
時代によって五鈷杵などの手道具は、
鈷(両方の爪のような部分)のデザインが違っていたそうです。

特に顕著なのは、
平安時代では、まっすぐ伸びていてすなおな表現がされていたのに対して、
後の
鎌倉時代には、
デザインが洗練されてきて鈷の先が微妙な角度で曲がっていて
角という名前がつけられています。
また、連珠紋(れんじゅもん)という珠が連なった模様が施されているのも
この鎌倉時代からだということです。
他にも金属の材料や混合比によって
"四分一(しぶいち)"、"赤銅(しゃくどう)"という呼び方があり、
見え方の美しさや硬度の違いなどあるという話もありますが、
それはまたの機会に...。 

いろんな作業場面を見せて頂ける様に
段取りを付けて下さる配慮をして下さり感謝します。
伝統工芸品を製作しておられる方のご苦労とこだわり
そして 出来上がったものの素晴らしさを
多くの方に わかっていただいきたいと思っております。
本来なら隠してもいいような実際の製作の現場を見せて頂いた
関係者の皆様には、多大なる感謝をしております。
良いご縁をいただきまして、ありがとうございました。


(注1)金剛鈴
・・・密教の修法に際して、鈴の音により諸尊を驚覚し歓喜させ供養するために用いられる。
  聖地巡礼の遍路が持つものもこの鈴である。素材は銅合金鋳造で製作される。


※ 見学させて頂いた工房名・所在地・お名前などについて一切お答えは出来ません。
こちらの工房での製作や商品については、当店にお問合せ下さい。


 - 画像・文章は転載不可です -




・・・あとがき・・・

今回公開させて頂いているこのレポートは、改訂版です。
改訂前は、写真入りでとても時間をかけて作り上げたものを、掲載しておりました。

この現場のレポートは、驚きと感動でもちきりでした。
やはり、こういうことを惜しみもなく教えていただける現場の方に
尊敬と感動の声があったのです。

公開できましたのは1週間という短期間でした。
やむおえない事情で掲載を中止させて頂いておりましたが
「どうしても見学させて頂き、知った伝統工芸品を製作しておられる方の
ご苦労とこだわりを多くの方々にお伝えしたい!」
という気持ちがいっぱいになり、1写真・文章のみの改訂版を公開する事に致しました。

見学させて頂きました製作所の社長様、及び職人の方々には、
大変感謝いたしますとともに

このレポートを最後までお読み頂いた皆様、ありがとうございました。



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